その多くは兵庫県で作られ、特A地区と呼ばれる山田錦のグラン・クリュ(ワイン銘醸地ブルゴーニュの特級畑)のような地区もあるが、栽培可能エリアは広がっており、山田錦に挑戦する農家は各地に存在している。
この品種に並々ならぬ情熱を注ぎ続けているのが、「獺祭」で知られる山口県は岩国市の旭酒造だ。50%以上磨いた米から純米大吟醸のみを醸し、その全ての酒に山田錦を用いることで知られている。その洗練された味わいと注目度の高さは、昨今の獺祭ブームを読み解けば容易に想像がつくのだが、同社はその人気に甘んじることなく常に新たな挑戦を続けている。
その試みのひとつが2019年から開催している山田錦のコンテスト「最高を超える山田錦プロジェクト」だ。出品者の対象は全国の山田錦栽培農家。グランプリ米には、市場価格の約25倍の60俵3000万円という賞金が贈呈される。
グランプリ米とは
快晴の2023年1月17日。帝国ホテル東京の宴会場には山田錦生産者はじめ、多くのジャーナリストや業界関係者が一堂に会した。『最高を超える山田錦プロジェクト 2022』の表彰式に参加するためである。4回目を迎えた本大会では、過去最多の90エントリーの中から36点が事前審査を通過。山田錦に精通した7名の審査員が、トップに輝く山田錦をじっくりと見極めその頂点が決定した。表彰式では旭酒造の桜井博志会長と桜井一宏社長から、今回の審査会に至るストーリーが語られたが、興味深いのはその審査基準だ。同社が高レベルと認める山田錦は、国が定めた従来の酒米審査や、日本酒関連の様々なテキストに記載されている「好ましい酒米のスタイル」とは条件が異なっている。
同社の審査項目は下記の通り。
・粒が揃っているか
・心白が中心にあるか
・心白がより小さいか
・ツヤがあるか
・被害粒(病気にかかっているもの)がないか
・通常の米に比べて茶色や緑に着色しているものがいかに少ないか