テーマセッションで行われた「メタバースが加速する日本の観光」では、MVJの代表理事を務めている長田新子氏をMCとして、一般財団法人渋谷区観光協会代表理事の金山淳吾氏、文化庁文化経済・国際課課長補佐の中平公士氏、文部科学省Policy Making for Driving MEXT(ポリメク)メタバース検討チーム代表の黒田玄氏、Psychic VR Lab取締役COOの渡邊信彦氏、大阪府・大阪市万博推進局事業推進部出展企画課担当係長の林真史氏が登壇。これまでの事例を踏まえた、観光へのメタバース活用について意見交換が行われた。
経済的価値を生まない観光資源が多い渋谷
まずは金山氏から、渋谷での先行事例について解説が行われた。渋谷区では、すでに2019年から「渋谷5Gエンターテインメントプロジェクト」がスタートしており「超高速通信時代に、街のエンターテインメントはどうなるのか? デジタルエンターテインメントは街の観光資源になるのか?」をテーマに座談会を発足させている。一般財団法人渋谷区観光協会代表理事金山淳吾氏
その中で、デジタルレイヤーの観光資源はどういう構造になるのか、どういった可能性があるのかを考え、ARやXR、MRといったプロジェクトの開発を増やしていったとのこと。さらに2020年からのコロナ禍で、街に人を呼べない状況となり、バーチャルリアリティで街の価値を研究していくという流れになり「区公認のバーチャル渋谷ができたことが大きなニュースになっている」(金山氏)と話している。
また金山氏は「渋谷区は経済的価値を生まない観光資源が多い」と話している。たとえば、観光ガイドサイトなどで紹介される渋谷のスクランブル交差点や代々木公園は無料。ハチ公も無料で写真撮影が可能だ。とはいえ、新しいテーマパークや公園を作るにしても土地がない。そのためにVRといったデジタル技術が必要となるわけだ。
一方、大阪では、2025年に万博が開催されるため、林氏は「万博に向けての都市魅力の発信がテーマになっている」とのこと。さらにバーチャルパビリオンを作成し、万博自身の魅力も伝えていくことを進めている。
大阪府・大阪市万博推進局事業推進部出展企画課担当係長の林真史氏
とはいえ、バーチャル大阪はまだできて間もないこともあり、イベントなどを開催すると、バーチャル空間を体験したり参加してもらえるが、イベントがないと参加してもらうのが難しいとのこと。「もう少し活性化してみなさんにバーチャル大阪を楽しんでいただきたい」(林氏)と話しており今後に期待したいところ。
バーチャル大阪の概要
ちなみに、バーチャル渋谷とバーチャル大阪はつながっており、大阪と渋谷を瞬時に移動可能。新しい都市のあり方について両地域で実験が行われているのも重要なトピックとなっている。