この天体は、2002年に発見された「クワオアー(Quaoar)」。直径約1100km(冥王星のおよそ半分)の準惑星候補で、海王星の彼方、遠く冷たいカイパーベルト領域で太陽を周回し、「ウェイウォット」という名前の小さな衛星を持つ。
他の天体を取り巻く輪と異なり、クワオアーの輪は中心天体から遠く離れているため、惑星科学者たちを困惑させている。輪が存在するためには、物質が凝集して衛星を形成するのを防ぐ潮汐力が必要であるため、天体の近くにしかないと考えられていたからだ。クワオアーと輪との距離は、それまで可能と考えられていた距離の2倍だった。
クワオアーを取り巻く輪は、カナリア諸島ラパルマ島にあるカナリア大型望遠鏡の高速カメラで観測された。太陽系で輪を持つことが判明した天体は、土星、木星、天王星、海王星、カリクロー、準惑星ハウメアに続き7個目。
クワオアーを取り巻く輪の想像図(PARIS OBSERVATORY)
論文の共著者、英シェフィールド大学物理学・天文学部のヴィク・ディロン教授は「太陽系でこの新しい輪を発見できたことは予想外で、さらにクワオアーからこれほど離れたところで見つかったことは二重の驚きでした。こうした輪が形成されるしくみに関する定説に疑問を呈するものです」と語った。
この発見には、超高感度高速カメラ「HiPERCAM」の使用が不可欠だった。「この事象は1分も続きませんでした。輪は小さく、ぼやけているため、直接観察はできません」とディロンは説明。「土星のあの雄大な輪のことは、誰もが子供時代に習います。今回の新発見によって、その成り立ちについてのさらなる知見が得られることを期待しています」と述べている。
(forbes.com 原文)