アジア

2023.02.09

中国の気球は「世界的監視プログラム」の一部、米当局者が発言

サウスカロライナ州マートルビーチで、撃墜された中国のスパイ気球を回収中の船(Photo by Peter Zay/Anadolu Agency via Getty Images)

先日、米軍の戦闘機によって撃墜された中国のスパイ気球は、世界中の軍事基地を監視する中国の世界的プログラムの一部であると、ニューヨーク・タイムズ(NYT)の取材に応じた米政府関係者が発言した。

先週モンタナ州ビリングス上空で発見されたこの気球について、中国当局は民間の気象プロジェクトのものだと主張したが、米当局者は2月8日のNYTに対し、実際はレーダーによる探知にかからないよう設計された中国の監視プログラムの一部だと語っている。

当局者によると、巨大な気球は人工衛星とは異なり、風によって不規則なパターンで漂うことが可能で、高度約6万フィート(約18キロメートル)という比較的低い空域に浮かんでいても、レーダーによる検出を回避できるという。また、これらの気球は人工衛星よりも鮮明な画像を撮影でき、人工衛星では拾えない地上からの信号も収集できると、匿名を条件に取材に応じた当局者は述べている。

ワシントン・ポストによると、先週発見された気球は、米当局が発見した最新のものに過ぎず、その他にも5大陸の12カ国以上でこのような気球が発見されたという。

また、米国防総省は6日、トランプ前大統領の在任中に同省が、中国のスパイ気球の疑いがある3つの気球を探知できていなかったことを明らかにした。しかし、トランプは同省の主張を否定し、5日のFOXニュースに対し、彼の大統領在任中には中国政府が「我々を大いに尊敬していた」ため、このような事件が「起こらなかったし、起こるはずがなかった」と述べていた

米国沿岸警備隊と海軍は4日にサウスカロライナ州沖に落下した気球を回収し、膨らむとバス3台分ほどのサイズになる気球を初めて間近で撮影し、米中の緊張状態を新たに高める気球の中身についての調査を開始した。

台湾侵攻に向けた準備という見方

今後の焦点となるのは、中国が監視用気球プログラムを開始した理由だ。米国のシンクタンク「ゲートストーン・インスティチュート」のゴードン・チャンは、フォーブスの取材に「気球は紛れもなくスパイ行為に使われる」と述べ、国防総省の主張を繰り返した上で、「中国には、米国当局の反応を探る目的があったのかもしれない」と付け加えた。

チャンはまた、「近年軍事力を増強してきた中国の習近平国家主席が戦争の準備をしている兆候である可能性もある」と述べた。さらに、その戦争が、昨年中国がミサイル攻撃を含む軍事演習を行った「台湾への侵攻という形になる可能性が最も高い」と、フォーブスに語った。

forbes.com 原文

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