その結果、米国では過去10年間、大学への入学者数が確実に減少しており、高卒者の多くが大学の入学を延期または完全にスキップしている。世界経済フォーラム(WEF)によると、2022年に米国で大学に入学した人は10年前と比較して400万人少なくなり、在学者数は10%減少した。ゲイツ財団が大学に進学しなかった学生を対象に行った調査では、約半数が費用と時間が投資対効果に見合わないと感じていることが明らかになった。
情熱を育むには時間がかかる
大学以外の場所で情熱を見出すことと大学に通うことは、相容れない決定ではないという考え方もある。情熱は、大学という環境の中で育み、実験することができるし、キャリアを追求する際にも有益となる。人は人生の早い段階ででキャリアや興味を変えることがあるため、高等教育とキャリアへの目標を組み合わせれば新たな道を開くことができる。つまり「どちらか1つ」という考え方は、見直しが必要だということだ。大学側は、この競争に勝ち残り、学生を惹きつけるために、彼らがスキルを身につけると同時に実績ある起業家のメンターシップを提供することが、今日の学生が求めている刺激とROI(投資利益率)をもたらすと認識している。
ミシガン大学のような機関では、起業家リーダーシッププログラムといった、成功したメンターと学生をマッチングさせるプログラムを確立している。「このプログラムは、ミシガン大学で最も意欲的な人材に、大学生活中および卒業後に起業の道へ導くための優れた体験型カリキュラムを提供する」と説明されている。
ハーバード・ビジネス・レビューによると、情熱は不変であり、見出すものであり、見逃すものであり、プロセスの一部ではなく、個人に起こるものであるという誤解がしばしばあるという。「仕事に対する情熱を育むには、多くの場合時間がかかります。またスキル、自信、人間関係も必要です」とヤン・M・ヤヒモビッチは付け加える。
大学卒業後、キャリアを歩む中で、自分の情熱を見出すことができるかもしれない。彼は、弁護士のウィリー・D・パウエルズにインタビューを行い、情熱を見出すことの難しさ、そしてそれがキャリアにどのような影響を及ぼすかについて現場の声を聞いた。パウエルズは法学部卒業後に自分の情熱を見いだし、人身傷害の弁護士となり、弁護士事務所を設立することにつながった。自分の選んだ分野で成功する前は情熱を見出すのに苦労していたが、今では弁護士として、また目的を探している人たちのメンターとしての役割を担っていると考えている。
「情熱は、目的と考えるとわかりやすいでしょう。最近の若者の多くは、一時の興味と生涯の情熱を混同し、大学をスキップしたり、目先の興味に溺れて大きなチャンスを逃し、しばしば後悔しています」と、パウエルズはいう。「ロースクールを経て、さまざまな法律事務所でインターンを経験し、パートタイムやフルタイムの仕事をするうちに、私は法律の世界について明確なイメージを持つようになりました。そして、自分の事務所を設立したいと思うようになりました。私は、苦しんでいる人たちの補償を手助けするという自分の情熱を発見したのです」