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2023.03.05

モメない、幸福な相続のためのマスト事項は「相続登記」

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不動産登記をしないことの落とし穴

さて、親が亡くなって無事に相続が済んだら、忘れてならないのが不動産の相続登記です。つまり、親の名義だった土地や建物を、新しく自分の名義にする手続きです。

2021年に民法の規定が見直されて、相続登記が義務化されました。3年以内に相続登記の手続きをしないと、10万円以下の過料が課せられてしまいます。

登記を怠っていると、いつまでも亡くなった人の名義のままになってしまいます。その結果、昔々の先祖の名前がずっと登記簿謄本に残っているという例も見かけます。

もちろん、価値がある土地ならば誰でも自分のものにしたいので登記をします。しかし、価値の低い土地だと、相続登記の手続きや登録免許税の支払いが面倒だという理由で、そのままにしておくケースもよく見られるのです。

ところが、しっかり自分の土地は自分のものだと主張しないと、別の人に勝手に使われたり盗られたりする恐れが出てきます。

とくに悪質なのが、土地の所有者のふりをして詐欺を働き、不動産会社などをだまして大金を巻き上げる、いわゆる「地面師」です。2017年に東京の一等地をめぐって50億円以上をだまし取った地面師の事件は、メディアでも大きく取り上げられたので、ご存じの方も多いでしょう。

地面師はパスポート、実印、印鑑証明などを偽造して地主になりすまし、不動産屋や親族の役を演じる人間とともにグループで行動し、まことしやかに土地の買い取りを求めてきます。そして、契約金を受け取ったところで姿を消してしまうという手口です。

実は、私の会社も地面師に狙われたことが一度だけありました。地主がまとまった金が必要となり、一等地を割安で売りたいというのです。信用しかけましたが、どうも話がうますぎる。本当にあの人は地権者なのかと疑い、近所の人に確かめることにしました。

写真を持って近所を回ると、「そんな人は見たことがない」と口を揃えるので、「この話は危険だからやめよう」とストップをかけたのです。

地面師の詐欺の舞台になってしまうと、本来の所有者や相続人もとばっちりを受けます。そんなことにならないよう、不動産の相続をしたら、できるだけ早く相続登記を済ませてください。

天野隆(あまの・たかし)◎慶應義塾大学経済学部卒業。税理士法人レガシィ代表社員税理士、公認会計士、宅地建物取引士、CFP。相続専門税理士法人として累計相続案件実績件数は24000件を超える。アーサーアンダーセン会計事務所を経て、1980年から現職。『やってはいけない「実家」の相続』(青春出版社刊)他、99冊の著書がある。
『相続格差』(天野隆・税理士法人レガシィ著、青春出版社刊)

『相続格差』(天野隆・税理士法人レガシィ著、青春出版社刊)

文=天野隆

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