親と子が、「変えられるもの」と「変えられないもの」
親と子がそれぞれ、変えられないものと変えるものを分けて考えることも大切です。変えられないものを変えようとすると、問題が発生します。親の立場から見て、変えられないものには何があるでしょうか?アドラー心理学を勉強してショックだったのですが、親は子どもの人生は変えられないというのです。
確かに、途中までは変えられます。子どもが幼いころは、何を与えようか、何を習わせようかということで、変えることができます。しかし、最終的には、当然のことながら変えられません。
もちろん、すでに起きたことも変えられません。それをいつまでたっても、「ああしておけばよかった」「こうすれば、あんなことにはならなかったのに」と引きずっていると前に進めなくなってしまいます。
では、親にとって変えられるものは何でしょうか?その1つは自己受容です。自分をあるがままに受け入れて、子どももあるがままに受け入れて、今できることは何かを考えるのです。
子どもが受験に落ちたり、離婚して帰ってきたりしても、なぜそんなことになったのかを問いただしても意味がありません。起きたことをすべて受け入れてあげて、「私にできることはある?」と聞くだけでいいのです。
一方、子ども側にとって変えられないのは、当たり前ですが親の人生です。ですから、親の財産をどうもらうか、どうするかは変えられません。なかには、それをわきまえずに、「俺たちに残してくれるんだから、そんなムダなものは買わないでくれ」「そんなに勝手に使ったら残らないじゃないか」「相続税のことまで考えてやってくれ」という人がいますが、それは大きな間違いです。
子どもにとって変えられるものは、やはり自己受容です。自分を受け入れて、親を受け止めることで、親に対して何をしてあげられるのかがわかってきます。例えば、旅行に連れて行ったり、デジタル機器の操作を手伝ってあげたりするのも、そうした自己受容によって可能になる行為といってよいでしょう。