ビジネス

2023.02.11 17:00

やっと開いた「女性が経営者になる」扉。ポーラ初の女性トップの責任と覚悟

これまで女性管理職が増えなかった要因を探り、さまざまな改善を図ってきた。

「管理職の候補者リストに、ある女性社員の名前が載っていなかったので、上長に理由を尋ねたのです。すると、『彼女は妊娠を望んでいるらしいから、負荷をかけるのはよくないかと思って』と。本人の意向を聞く前に、“思いやり”によって昇進機会が失われていたわけです」

以来、人事部主導でジェンダーバイアス研修に取り組み、いまでは「明らかにリストに載る女性が増えた」と話す。

「能力のある女性たちをサポートすることでチーム全体のパフォーマンスが上がり、管理職のパフォーマンスも上がる。まさにチームビルディングとしてD&Iに取り組むのだと管理職自身が認識する必要があります。そうしないと“子育てママをかばうだけの施策”になってしまい、どこかでひずみが生まれますから」

ふてくされて叱られた過去

チームづくりという点では、及川にも苦い経験がある。埼玉の販売会社で、営業所や販売事務所をサポートする仕事を任されていた時のことだ。

「当時の私は、自分が頑張って結果を出すことしか考えていなかった。『私が休んだら会社が回らない』なんて思い込んでいたから、産後すぐに復帰して、誰よりも働いている自負をもっていたんです」

しかし、30代半ば、管理職への昇格試験に落ちる。試験結果の総評には『自己中心的』『視野が狭い』『なぜ彼女が昇格試験を受けようと思ったのかわからない』などと辛らつな言葉が並んでいた。

「もう、すごくショックで。ふてくれさてグレました(笑)。それが表情や態度に表れていたんでしょうね。長年のビジネスパートナーだったショップオーナーの女性に『最近のあなたはどうしたの? これ以上私たちをガッカリさせないでちょうだい!』と叱られた。それで目が覚めたんです」

自分がやりたいことは何か。それを実現するためには何が必要なのか。考えた結果、チームビルディングを強く意識するようになり、マネジメントの本などを読み漁るうちに気づいた。語るべきは、自分の実績ではなく、自分の“will”なのだ、と。

「壁にぶつかった時に一緒に乗り越える仲間がいないと、大きなことはなし遂げられません。私たちのチームはどんな山に登るのか、なぜ登るのか、登ったらどんな景色が見えるのか。それを伝え、共に頂上を目指すのがリーダーの役目なんです」

目標とするリーダー像を尋ねると、意外な答えが返ってきた。マンガ『ONE PIECE』の主人公・ルフィだ。

「ルフィのように強い思いと行動力をもちながらも、皆の夢と一緒に同じ船に乗る。それが私にとって理想のリーダーであり、理想の組織なんですよ」


おいかわ・みき◎1969年、宮城県生まれ。91年、東京女子大学卒業後、ポーラ化粧品本舗(現・ポーラ)入社。販売会社に出向し、埼玉エリアマネージャーとして販売の現場の最前線で経験を積む。その後、本社に戻り、商品企画部長、執行役員、取締役などを経て、2020年1月より現職。

文=音部美穂 写真=若原瑞昌

この記事は 「Forbes JAPAN No.101 2023年1月号(2022/11/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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