アート

2023.02.14

アートはビジネス界の救世主となり得るか? 藝大x東大の前衛集団が表現する答え

ALT提供:『握れば拳 開けば掌』なぜ私たちはコーラを飲む時に合掌しないのだろうか?

下山が経営とアートを結びつけるようになったのは、数千年追求され続けている芸術や美への欲望を理解することが、普遍的な組織を作ることに寄与するのではないかという想いからだった。自分自身が経営者として苦い失敗も経験する中で、企業のみならず、優れた組織が共通してもつ理念や教義を外部化し、継承するための依代としての作品制作の可能性を見出したのだ。

下山はその活動においてヨーゼフ・ボイスという芸術家を参考にしているといい、ボイスが提唱した「全ての人は社会を彫刻する芸術家である」という思想のもと、自身も現状維持のまま進むことなく、新しい活動を常に模索している。

昨年は、地方創生事業を始動。山口県岩国市に支社を設立し、今年は国内での複数拠点の立ち上げや海外進出も検討している。また、アーティストとしては「1万年後も残りうる制作」を目指し、そのために必要なリソースや言説の注目がアートに集まるようなパトロネージュの再構築(企業及び社会とアートの関係性再構築)をテーマに活動を行なっている。


「学部生のころ、家賃と学費を稼ぐために手当たり次第にビジコンなどに参加していた模索の時期から、早くも年月が経過しました。起業してから何度も困難を乗り越え、こうしてALTによる展示が開催できたことからも、『必死に考える人の情熱や才能が、きっと世界を変えるはず』という思いは、一貫して変わっていません」(下山)

そんな下山が「世界を最も加速させる組織を目指します」と宣言しているアートとビジネス、アカデミアを掛け合わせた活動は、果たして日本の停滞した経済の救世主となり得るのか?そのアンサーは、新しい試みに挑み続ける「ALT」の歴史の1ページをめくるたびに、表現されていくことだろう。

文=中村麻美

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