決済特化型ファンドから3社ユニコーン
村松は、事業会社の経営者の顔をもち、「大胆な仮説実行」する投資家だ。新卒でジャフコに入社し、現GMOインターネットグループを担当。シリコンバレーオフィス勤務を経て、同社上場後、1999年にカード決済処理会社を設立、経営統合を経て、GMOペイメントゲートウェイとして05年に東証マザーズ、その後東証一部に上場した経験を持つ。12年には、「東南アジア全域でオンラインエコノミーと、それを支えるデジタル決済がものすごく成長する。だからこそ、現場にいないといけない」と家族とシンガポールに移住した。
「当時はまだ『FinTech』という言葉も普及してないころ。決済特化型ファンド組成時も、『東南アジアに本当にオンラインエコノミーがきますか』『決済領域はそんなに成長しますか』と、仮説に対して懐疑的な見方がほとんどでしたから」。
だが、結果的に、この決済特化型ファンドからは、Coda Paymentsを含めて、インドの決済サービスRazorpay、東南アジア最大のBNPLのFinAccelと、アジアだけで3つのユニコーン企業が生まれている。一方、投資哲学について村松は次のように話す。
「投資哲学は、投資後の『継続保有、追加投資の判断』にいちばん出る。Coda Paymentsも、事業が成長し続けていたものの、ほとんどの株主が保有し続けられなかった。我々が基準としている、共同創業者がいる、あきらめずにやり続ける力が強いという2つをこの会社は持ち続けたため、支援し続けた。だから、(投資金額の)300倍のリターンにもつながった。一度、黒字転換した段階で共同創業者たちから『売却を検討している』と話があった際には、GMOペイメントゲートウェイでの経験や実例を出しながら、『これからが面白くなる本番だ、いちばん盛り上がる前にパーティから帰るのか』と必死で説得した」
村松は、今後も、新ファンドを通して、アジアのFinTech企業に投資を続けていくという。その理由についても、大胆な仮説を立てている。
「現在、時価総額100兆円超えのFinTech企業はない。ただ、これから世界経済が成長を取り戻すと考えると、10年後には、GAFAM級のグローバル企業であれば1000兆円超えの企業が出てきてもおかしくない。であれば、100兆円超えするFinTech企業が複数出るはずで、1社以上はアジアから出るはずだ。将来の100兆円超え企業になりそうな会社をいまから応援していきたい。Coda Paymentsへの投資と部分売却は、その一つの方法として非常に参考になる」
最後に、村松にあらためて「なぜ、Coda Paymentsを支え続けられたのか」を問うた。彼の答えは「正直、決済領域が好きだから、に尽きるかもしれません。自身の事業でも、投資先としても」だった。