シナモンは、ニッケイ属樹木のいくつかの近縁種の内皮からとれる香辛料だ。これらの熱帯常緑樹は東南アジア、特にヒマラヤの山々に分布し、また中国南部、インド、東南アジアの森林でも見られる。
多くの研究でシナモンとその活性化合物が脳の健康を向上させ、認知症を予防する可能性があることが示唆されているが、これらの利点がヒトにおいてみられるという証拠はまだ検証されていない。シナモンはシンナムアルデヒド、クマリン、タンニンなどいくつかの生理活性化合物を含んでいる。これらの一部は脳に入り込むことができ、いったん脳内に入ると酸化ストレスや炎症を抑制する可能性があることがわかっている。
人間の認知機能におけるシナモンの影響をよりよく理解するために、イランのビールジャンド医科大学の医師と学生のチームは、シナモンの摂取と学習および記憶との間に関係があるかどうかを判断するために行われた科学文献を検証し、その分析とレビューをこのほど発表した。
研究チームは、2021年9月にPubMed(パブメド)、Scopus(スコープス)、Google Scholar(グーグル・スカラー)、Web of Science(ウェブ・オブ・サイエンス)などの様々なデータベースを使用して関連研究を探し出すことから作業を開始した。その結果、2605件のシナモン研究を特定した。これらの研究がチームのレビュー用の基準を満たしているかどうかを判断するため、チームは研究に使用したシナモンの化合物または種類、研究参加者とサンプルの規模、使用したシナモンまたはその生物活性成分の量、研究参加者の性別と年齢、摂取期間と方法、得られた結果などのデータを抽出して分析した。さらに、さまざまな基準を加えて研究の質と信頼性を見極めた。
このような作業の結果、40の研究が基準を満たした。これらの研究は33のイン・ビボ研究(ヒト、げっ歯動物、その他の動物など生体を対象とした研究)、5つのイン・ビトロ研究(細胞培養または死後組織での研究)、そして生存している患者を対象とした2つの臨床研究だ。
ほとんどの研究で、シナモンの摂取が人の学習・記憶を著しく改善することが確認された。例えばイン・ビボ研究ではシナモンまたはその成分(オイゲノール、シンナムアルデヒド、桂皮酸など)が認知機能に良い影響を与える可能性があることがわかった。この発見は、シナモンまたはシンナムアルデヒドを細胞増殖培地に加えると細胞生存率が上昇し、タウタンパク質およびアミロイドβペプチドの凝集が減少することを示すイン・ビトロ研究によって裏付けられた。タウタンパク質の凝集体はアルツハイマー病を含む様々な神経疾患と関連している。アミロイドβペプチドはアルツハイマー病の原因に中心的な役割を果たすと考えられている。
2つの臨床試験でも同様の結果が得られた。10代の若者を対象に行われた1つの臨床研究ではシナモンガムを噛んでもらった。シナモンガムを噛むことで不安が軽減され、記憶力が向上することが示唆されるという肯定的な結果が得られた。
もう1つの研究は60歳以下の糖尿病予備軍の成人を対象に行われた。食パンに2グラム(約小さじ3/4)の挽いたシナモンを塗って毎日食べてもらったが、認知機能の向上、悪化いずれにおいても大きな変化は認められなかった。
研究チームは、実施したレビューが他の科学者に刺激を与え、シナモンとその有効成分の一部が人間の脳の機能に与える影響、特に記憶や学習を促進したり認知機能障害を遅らせたりすることについてさらに調査するきっかけになることを期待している。
(forbes.com 原文)