国枝慎吾とユニクロのパートナーシップ、真価は「これからが本番」

ユニクロ代表取締役会長兼社長の柳井正氏(写真左)と国枝慎吾氏

1月22日に世界ランキング1位のまま引退を表明した、車いすテニスの王者・国枝慎吾氏が2月7日、所属するユニクロの有明本部で引退記者会見を行った。

同社の柳井正代表取締役会長兼社長とともに登壇した国枝氏は、2009年4月にプロ宣言してからの長い現役生活に別れを告げる気持ちを率直に語った──。

会見の冒頭は「まず泣かないように。笑いでお願いします」と、柳井氏から次のような労いと賞賛で始まった。

「引退おめでとうございます。少しだけ寂しくなるんですけど、プロのアスリートとしてやるべきことはすべて出来ました。新しい国枝慎吾の誕生という意味で、今日はめでたい日です。

日本の車いすテニス選手として初めてプロ転向を表明された直後、僕は『大丈夫かなあ...... 車いすテニス、プロのスポーツになるかなあ』と思った。でも立派なプロスポーツになりました」

2009年、ユニクロが初めてプロアスリートとグローバルアンバサダー契約を結んだ。その相手が車いすテニスの国枝氏だったことは、世間に大きな驚きとインパクトを与えた。錦織圭選手よりも前の契約だった。当時の大胆な決断と一抹の不安のようなものが窺える、興味深い告白だ。さらに絶賛が続く。

「僕は、国枝選手は非の打ちどころのない、世界一のグローバルアンバサダーだと思っています。素晴らしい人格と生活態度。あらゆるタイトルを獲り、世界中の人々に温かい声援を受けて。

そして、地頭のよさ。飛び抜けて地頭がいい。ロジャー・フェデラー選手がユニクロのグローバルアンバサダーになってくれたのも国枝選手のおかげです」
国枝慎吾さん
そして今後へのエールを送った。

「国枝選手の強みは、勝つことに徹底してこだわる、絶対にやる。がむしゃらさ、明るさ。人生をかけて、本当にひとりの人間として尊敬できる。

これからが人生の本番です。今後も最大限、応援していきたいと思っていますので。いままでは助走。過去のことは全部忘れてください。必要ないです、過去は。これからが本番ね、今日がスタート。一緒に、世界の中の日本をよりよく変えて行きましょう。

残念ながら日本はいま閉塞状態です。本当にお金がもう全然ありません、借金ばかりで。若い人が将来希望を持ってやっていくロールモデルとして、これからの国枝君に僕は期待しています」

これを受けて、国枝は引退を決意するまでの心の経過を素直に語った。
次ページ > 震えるような感情に 「最高のテニス人生を送れた」

文=小林信也 写真提供=ユニクロ 編集=宇藤智子

タグ:

連載

Forbes Sports

ForbesBrandVoice

人気記事