検査開発のきっかけは、2016年に発表されたある論文。長く無菌状態と信じられてきた子宮内に、実は微量の菌が存在することに加え、ある乳酸菌の割合が妊娠率に影響することが明らかになった。子宮内の菌の状態(子宮内フローラ)に不妊の原因があるとわかれば、適切な治療により妊娠の可能性を高めることができる。
当時ゲノム解析技術の販売会社で働いていた桜庭は起業を決意。腸内フローラを調べる技術を応用し、17年に子宮内フローラ検査の実用化に成功した。同検査は現在、不妊治療クリニックや大学病院など250以上の医療機関に導入され、検査数は2万件を突破。この4月から始まった不妊治療の保険適用化も追い風となり、長期的な検査数の増加が見込まれている。海外展開も計画中だ。
将来はがんや遺伝病などの予防に役立つ検査の提供も目指す。ゲノム医療が社会実装されれば、医療のパーソナライズ化が進み、多くの人が救われる社会も実現できる。「ゲノム解析技術を通じて、家族の未来をつくりたい」と語る桜庭は、そんな未来を急速に近づけようとしている。
さくらば・よしゆき◎1972年生まれ。埼玉大学大学院博士後期課程修了。理化学研究所ゲノム科学総合研究センター、イルミナなどを経て、2017年にVarinos創業。