タリバン政権下で政治的な意見や、女性への権利抑圧が続くなか祖国で迫害を受ける恐れがあるとして、帰国の目処も立たず、彼らは日本での生活再建の道を歩み始めている。東海エリアでは、難民認定を受けられずに、そのほかの就労ビザで滞在する避難民たちも含め、難民と企業をマッチングする取り組みが始まった。
その現場を追って見えてきた課題や、企業対応の極意とは──。
前代未聞の就労マッチング
アフガン避難民の就労マッチングに名乗り出たのは、ベンチャーとアトツギの企業交流の場「TAKIBI & Co.(タキビコ)」を開く岐阜県羽島市の三星グループ代表の岩田真吾だ。高品質な尾州ウールの繊維産業の会社で、東海エリアで起業家やアトツギ、投資家などを呼び、共創の場づくりを手がけている。今回はTAKIBI & Co.の一環で、ハラルフードで焚き火を囲み、避難民と経営者や企業関係者らが向き合った。交流会には企業関係者や支援者らを含めて47人が参加。このうち、アフガン避難民の参加者は、30〜40代の男女7人。過去に名古屋大学を修了した人が多く、大学から「アフガンフェロー」として認定され、1年間退避の支援を受けている。難民に特化した就労支援などを手がけるNPO法人WELgeeが、2022年10月に難民の就労伴走協定を名古屋大学と結び、個別にアフガン難民の就労支援を手がけてきた。
交流会のきっかけは、WELgee代表・渡部カンコロンゴ清花のFacebook投稿だ。昨年11月、アフガン難民の就労支援のハードルや課題感について思いを綴った。その最後に「採用やインターンに関心のある企業さんがいましたら、ぜひ連絡ください。特に、九州大学と名古屋大学にいる元・留学生たちの就労に携わっているので、九州・名古屋エリアの企業の皆さん、お力を貸してください!」と呼びかけたところ、三星グループの岩田が呼応した。
WELgeeが各地で避難民と就労マッチングのイベントを始めているが、焚き火を囲んでよりフランクに交流できる「前代未聞」企画として、両社とアフガン避難民を交えて準備した。
難民人材の魅力と、企業側のリアルな心配事
交流会ではまず、WELgee代表の渡部が、難民人材にまつわる日本の現状について紹介した。日本では難民認定者数が75人で、難民認定制度が始まった1982年以来過去最高だが、13514人が不認定で、国際的にも難民受け入れに消極的だ。認定されるまでに平均で4年4カ月かかり、中には10年以上待つ人もいるという。「今回参加しているアフガン避難民の皆さんのように元々日本で学んでいた人や、日本の平和や安全・人権大国のイメージから、つてを辿って来られる方が多くいます」と、渡部は語った。また難民人材について「ユニークな人材の宝庫です。私たちの就労支援の活動は、もともと(難民認定のように)本当に1%以下の針の穴を通ることを目指すしかないのかという疑問から始まっています。多様な持ち味が生かされないのはもったいない。安定したビザを取得し、日本で働く『人材』として活躍し、一緒に未来を作っていくパートナーになると考えています」と思いを語った。