2022年5月、Cometeerの従業員は、スタートアップが調達した資金と成長速度を宣伝するメールを、経営陣から受け取った。2人の関係者によると、前年の12月に何人かのスタッフが解雇され、4月には最高財務責任者が退社するなど、成長の苦しみを予感させる兆候もあった。しかし、このメールを受け取ったある元社員によると、このメールは当時社内に根強くあった楽観主義を反映しているという。「資金を得たんだだから、月に行くんだというような話ばかりしていた」と、彼らは言った。
Cometeerは、ロバーツが予測したように、面接プロセスを迅速化し、市場最高水準の給与を提供し、重要な人材を採用していた、と複数の情報筋は述べている。また、Cometeerが表に出ているよりもさらに大きな軍資金を持っていた可能性もある。スタートアップ追跡サイトPitchBook(ピッチブック)によると、同社はその春に推定8000万ドル(約100億円)の追加資金を調達し、評価額は8億ドル(約1000億円)以上に倍増した。同じコーヒーのスタートアップで小売チェーンを展開するBlank Street Coffee(ブランク・ストリート・コーヒー)は少なくとも6000万ドル(約79億円)、2017年にNeslé(ネスレ)が買収したチェーン、Blue Bottle(ブルーボトル)は1億1700万ドル(約150億円)を調達している。Cometeerは今回の資金調達についてコメントを控えている。
魅力的な給料ではすぐに心が動かない人には、2021年にForbesの「30 Under 30」に選ばれた同社の創業者ロバーツがいた。入社希望者は、彼の全力ピッチを受けた。Cometeerは、高品質の製品を顧客に提供するだけでなく、倫理的に調達された製品でロースターをサポートすることで、堅苦しいコーヒー業界をより良い方向に変えることができた。そして、多くのジョブピッチとは異なり、Cometeerの商品は、まさにその場で試してみることができた。「カフェインでテンションが上がり、ビジョンが売れた」と、別の元社員は言う。
しかし、Cometeerをコーヒー会社でありながら、テック系スタートアップのようなビジネスをしていると考える社員と、テック系スタートアップでありながら、たまたまコーヒーを売っていると考える社員の間には、より本質的な摩擦が生まれつつあった。