同報告書はまた、2023年の実質賃金は中国で3.8%上昇し、インドなど他の一部アジア地域ではさらに早いペースで上昇すると予想している。これに対して欧州は、実質賃金がおおむねマイナス1.5%、南北米大陸はマイナス0.5%との予想だ。こうなると、米中の賃金格差は3.3倍近くまで縮小する可能性がある。 賃金格差は今も存在するが、もはやかつてのように、中国で製造するほうが合理的だと思えるほどの差ではない。生産性はいまも米国の労働者のほうが高いことから、この人件費の差は完全に相殺されるかもしれない。
最近はそれ以外にも、切迫した問題が持ち上がっている。中国はもはや、物資調達先として、かつて考えられていたほど信頼できる存在ではないのだ。中国政府はコロナ禍のあいだ、マスクなどいくつかの重要物資に輸出規制をかけた。その理由は十分に理解できるが、そうした措置が、海外のバイヤーやメーカーに良い印象を与えたとは言えない。
中国政府はさらに、ゼロコロナ政策を導入し、長期間にわたって製造を停止させた。そうした状況は、コロナ流行が世界の大半で収束したとみなされた後も続いたため、西側メーカーが中国からの調達を見直すさらなるきっかけとなった。
中国経済は、以前とは異なり、西側諸国に頼る必要が減っている。西側メーカーが製造の場を他国に移動したとしても、成長は可能だ。ただし、縮まり続ける賃金格差と、上記の諸問題によって、中国経済の成長はこれまでのペースに遠く及ばない水準まで減速するだろう。
(forbes.com 原文)