経済

2023.02.07

製造の「中国離れ」進むか 欧米との賃金格差が大幅縮小

Getty Images

人材コンサルティング会社ECA International(ECAインターナショナル)の22年10月に発表した年次報告書「サラリー・トレンド・リポート」によると、賃金格差は2022年も縮小を続けており、23年にはさらに縮まりそうだ。2023年の中国ならびにアジア全般では賃金上昇率がインフレ率を上回るとみられる一方、欧米では賃金上昇率がインフレ率を下回る見通しだという。

同報告書はまた、2023年の実質賃金は中国で3.8%上昇し、インドなど他の一部アジア地域ではさらに早いペースで上昇すると予想している。これに対して欧州は、実質賃金がおおむねマイナス1.5%、南北米大陸はマイナス0.5%との予想だ。こうなると、米中の賃金格差は3.3倍近くまで縮小する可能性がある。 賃金格差は今も存在するが、もはやかつてのように、中国で製造するほうが合理的だと思えるほどの差ではない。生産性はいまも米国の労働者のほうが高いことから、この人件費の差は完全に相殺されるかもしれない。

最近はそれ以外にも、切迫した問題が持ち上がっている。中国はもはや、物資調達先として、かつて考えられていたほど信頼できる存在ではないのだ。中国政府はコロナ禍のあいだ、マスクなどいくつかの重要物資に輸出規制をかけた。その理由は十分に理解できるが、そうした措置が、海外のバイヤーやメーカーに良い印象を与えたとは言えない。

中国政府はさらに、ゼロコロナ政策を導入し、長期間にわたって製造を停止させた。そうした状況は、コロナ流行が世界の大半で収束したとみなされた後も続いたため、西側メーカーが中国からの調達を見直すさらなるきっかけとなった。

中国経済は、以前とは異なり、西側諸国に頼る必要が減っている。西側メーカーが製造の場を他国に移動したとしても、成長は可能だ。ただし、縮まり続ける賃金格差と、上記の諸問題によって、中国経済の成長はこれまでのペースに遠く及ばない水準まで減速するだろう。

forbes.com 原文

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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