そのきっかけは、2020年10月にグレン・マーティンスがクリエイティブディレクターに就任したこと。ブランドの方向性ががらりと変わり、トレンドの「Y2K*」ムード漂うアイテムが揃った。特に、2022年春夏コレクションにて初登場したアイコンバッグ「1DR(ワンダー)」は国内外で大人気となっている。
1978年の創業当時からのファンがブランドの成長とともに歳を重ねるなかで、グレンを起用したことにより、新しいファンの獲得に成功しているのだ。
もちろん、Z世代の心を掴んだポイントは、グレンのデザインだけではない。DIESELはZ世代をどのように捉え、コミュニケーションをしているのか。ディーゼルジャパンCEOの高實康誠に、シトウレイが話を聞いた。
*Year 2000。2000年頃に流行したファッションのこと
なぜ今Z世代がDIESELを着るのか
シトウ:高實さんは2020年3月にCEOに就任されました。どういう成長戦略を掲げてきましたか?高實:DIESELはもう何十年も前から「alternative for Luxury」という世界観を目指しています。これは“ラグジュアリーブランドに取って代わるような、その先にあるもの”みたいな概念です。
労働者の作業着だったデニムを、よりアッパーなカジュアルファッションに昇華させていこうと、プレミアムデニムブランドのマーケットを構築してきました。ただ、現在はいろいろなブランドが出てきて、マーケットが飽和状態になっています。
ですので、今一度DIESELの精神性や世界観を発信していくフェーズに入っていました。つまり多様性、感受性、革新性といった概念を、DIESELのアイテムやDIESELが発信するコンテンツで体験してもらって、お客さま一人ひとりの人生をより豊かなものにしてもらいたい、ということです。そのため、こうした概念をわかりやすくお客さまに伝えるためのアクションをずっと考えてきました。
シトウ:それを具体化できるクリエイティブディレクターとして、グレン・マーティンスが起用されたんですね。
クリエイティブディレクターのグレン・マーティンス(中央)
高實:そうですね。グレンの起用でDIESELは新しいことに取り組んでいます。もともとレディースのデザイナーだったグレンは、ジェンダーレスなイメージでブランドを再構築しようとしています。今までずっと参加してきたメンズのミラノコレクションから、ユニセックスなデザインでの発表に切り替えました。これは非常に大きな決断でした。