優れたリーダーには「強い好奇心」が欠かせない理由

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仕事でシンガポールにいた頃、日本語補習授業校で国語と社会を教えていたことがある。補習授業校とは、シンガポールの地元の学校やインターナショナルスクールに通う日本国籍の生徒が、土曜日に国語や日本文化を学びにくる場所だ。場所は、日本人学校の小学部の校舎にある。

生徒たちは普段は英語で学んでいて、ここに自分のルーツである日本や日本語を学びにくるのである。授業は日本の学習指導要領に沿って、日本で使われている教科書を使って行われる。

私が6年生の担任をしていたある年、国語の授業で作文を書く機会があった。テーマは「夢」。

様々な夢があってとても面白い授業だったのだが、長年キャリアに関わる仕事をしている私にとって何よりも面白かったのは、生徒たちの文章の構成の違いであった。

シンガポールの地元の学校に通っている生徒は、「今度のテストでいい点をとって、〇〇中学に行って、シンガポール国立大学でITの勉強をして、エンジニアになりたい」という流れで夢を語る。一方、インターナショナルスクールに通っている生徒は、「世界を飛び回るジャーナリストになりたい。そのためにジャーナリズムで有名な〇〇大学で勉強したい」という構成だった。

当然のことながらどちらが正解で、どちらが不正解ということはない。生まれ育った環境や国の教育によって人の夢に対するアプローチは違ってくる。生徒たちにとってはもとより、私にとっても全く異なるアプローチで書いてある夢を同じ教室で聞くことにより、お互いの価値観が大きく広がる機会になった。

私たちは多様性と複雑性の中で生きている。生まれた国、育った環境、性別、年齢、世代が異なる人達が混じり合って社会を形成している。

どんなに同じような人達が集まったチームであろうと違いはある。ベビーブーマー世代の人もいれば、Z世代の人もいる。そんな構成のチームを牽引するリーダーが意識しなければならないことはなにか、以下に3つ挙げてみたい。

1.オープンであるために、強い好奇心を持ち続けること

どんな考え方にも背景がある。自分とは異なる考え方を反射的に否定せずに、背景に強い好奇心を持ち、知っていく努力をすること。私がオープンでなければ、先の授業で作文を書いたどちらかの生徒に、その構成は良くないので書き直そうと言っていたかもしれない。この瞬間、教室の多様性は狭まり、生徒の考え方は小さくなる。
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なぜ地元の生徒はこういう書き方をして、インターナショナルスクールの生徒は別の書き方をするのかに興味を持てば、教育方針の違いなどを理解していくきっかけになる。どちらかを否定するリーダーが生み出す価値は小さくなる。
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文=西野雄介

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