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2023.02.09 09:45

扶養を外れるラインは時給1500円以上、時給アップで「年収の壁」が解決か

リリースベース(松村)

Getty image

2月1日、岸田首相は、いわゆる「年収130万円の壁」の解消を目指して対策を検討すると国会で話しました。配偶者の扶養控除を受けながら働いている人たちにとって、130万円の壁ならずとも、所得税が発生する103万円の壁、社会保険料が発生する106万円の壁などは、じつに悩ましい問題です。

年収が106万円を超えると所得税が発生し、手取りで106万円を受け取るには130万円ほど稼がなければならなくなります。また130万円を超えると社会保険料を支払う義務が生じて、130万円を受け取るには170万円ほど稼がなければなりません。そのため、もっと稼ぎたいのに制限せざるを得ないという、働きたい被扶養者には大変にもどかしい状態が続いています。

そこでビースタイルグループの調査機関「しゅふJob総研」は、2021年3月に実施した「時給相場の壁」と題した調査にもとづき、扶養控除と時給に関するデータを公開しました。そこに示された「扶養外し希望指数」では、時給1500円を境に「扶養を外したい」人が急激に増えています。さらに、時給2000円なら扶養を外すという人は9割を超えます。

また、扶養控除からはずれても働きたいと思える時給は、24.5パーセントの人が1500円と答えています。週に何時間働くかによりますが、1500円なら無理をせずに、控除なしで足が出ないという計算です。

希望する勤務時間は、週3日、週4日、週5日が合わせて9割を超えています。とくに週4と週5を希望する人は、2018年の調査に比べて増えています。仕事が好きだから壁を気にせずキッチリ働きたいという人や、この壁を意識しながらギリギリの勤務時間で働かざるを得ない人など、理由はさまざまですが、もっと働きたいと考えている人が増えているのは事実です。政府には、本当に困っている人たちを見据えて議論してほしいところですが、壁の解消までにはおそらく時間がかかります。そこで、しゅふJob総研は以上のデータから、「時給がもっと上がれば即解決」と主張しています。

とは言え、それができれば苦労しない、というのが雇用者の実情でしょう。しゅふJob総研研究顧問、川上敬太郎氏は、パートを採用する企業や求人広告を取り扱う業者に、時給と扶養外しの関係性を把握する目安としてこの調査結果を活かしてほしいと考えています。扶養を外してでも働きたくなる条件の仕事を増やすことで「就労抑制からの解放を目指す施策としてより即効性が高く、経済発展にも家計支援にも役立ちます」とし、「扶養枠の上限である年数の壁ではなく、扶養を外したくなる下限である『時給相場の壁』にこそ焦点を当てていただきたい」と提案しています。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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