経営者が座右の書とする漫画作品を紹介する連載「社長の偏愛漫画」。自身の人生観や経営哲学に影響を与えた漫画について、第一線で活躍するビジネスリーダーたちが熱く語ります。
第8回目は、連続起業家の中川綾太郎が登場します。聞き手を務めるのは、漫画を愛してやまないTSUTAYAの名物企画人、栗俣力也。
『蒼天航路』は組織のマネジメントを多面的に学べる“操典”だ
栗俣力也(以下、栗俣):『蒼天航路』は『三国志』をテーマにした作品ですが、中国史を題材にした漫画といえば『キングダム』が有名です。中川綾太郎(以下、中川):僕も『キングダム』が大好きで、その流れで別の作品を探していて『蒼天航路』に行き着いた、という感じでした。
リーダーシップを描いた漫画で好きな作品を経営者に聞くと、よく挙がるのが『ONE PIECE』と『キングダム』。でも、『蒼天航路』のほうが、細かい部分が実践的なんです。
僕が日々の会社経営やビジネスを考えるうえで大事にしているのは、物事を多面的に見るということ。一つの正解が絶対なのではなく、見方によって正解は変わってくる。つまり、視点は複数ある。よく使われる言い回しにするなら、「常識を疑う」「ゼロベースで考える」。あとは、現実的に考えること。リアリストとして現実的に考えることが、すごく重要だと思っています。
普通の漫画では、主人公がいきなり宿敵と戦ったり、なぜだかよくわからないけど勝ってしまったりしがちです。でも『蒼天航路』では、自軍の大きさも敵もどんどん変化していくなかで、どう戦い、勝ち続けていくのかが描かれている。現実的なステップの踏み方が、読んでいて非常に勉強になります。
栗俣:多面的というお話が出ましたが、『蒼天航路』は主人公を曹操にしておきながら、彼がまったく主人公として描かれずにエピソードが進んでいきます。そこが多面的で、この作品のいちばん面白いところですよね。
中川:曹操ひとりだけが優れた人物だというわけではありません。『蒼天航路』のすごいところは、モブキャラ(その他大勢の名もなき群衆)の人生にまで光を当てるところです。
栗俣:会社でも同じことが言えますね。一つの事業を進める際にもいろいろな主人公がいて、全員が主人公として動くからこそ成功する。
中川:世間では社長などトップがフォーカスされやすいけれど、会社ってそんな人たちだけでできていない。そういう部分も参考になっています。
栗俣:この作品に対して、当初からそういう見方をされていたんですか?