先月シアトルで行われた米国天文学会(AAS)第241回例会では、ウェッブの長引いた開発期間から学んだ教訓が主要な議題となった。具体的には、苦難に満ちた今回の経験をどう次世代の宇宙望遠鏡計画に生かすかだ。
NASAは初の「グレート・オブザバトリー(大望遠鏡群)」計画で、スピッツァー赤外線宇宙望遠鏡、ハッブル宇宙望遠鏡、チャンドラX線観測衛星、コンプトン・ガンマ線観測衛星の4基を打ち上げた。そのうち、今も稼働しているのはチャンドラとハッブルだけだ。NASAと天文学界は、予算はまだついていないものの、次世代の「ニュー・グレート・オブザバトリー」計画をすでに検討している。
新計画は、赤外線・可視光・紫外線(IR/O/UV)望遠鏡、X線望遠鏡(リンクスX線観測装置ミッションのコンセプトに基づく)、遠赤外線(FIR)望遠鏡(オリジンズ宇宙望遠鏡ミッションのコンセプトに基づく)の3基からなる。総費用は2020年度時点で、最初に打ち上げられるIR/O/UVが110億ドル(約1兆4000億円)、他の2基はそれぞれ50億ドル(約7000億円)程度と見積もられている。
ハーバード・スミソニアン宇宙物理学センターの宇宙物理学者でAAS副社長のグラント・トレンブレーは筆者の電話・メール取材に対し、もし予算を獲得できれば、3基すべてを2045年までに打ち上げることができるとの見解を示した。
THE NEW GREAT OBSERVATORIES COALITION (WWW.GREATOBSERVATORIES.ORG)
新計画の最初のミッションであるIR/O/UV宇宙望遠鏡は、正式に「Habitable Worlds (HabWorlds) Observatory(居住可能世界観測所)」と呼ばれている。100億対1のコントラストで撮像できる超高感度セグメント型ミラーを使って、居住可能かもしれない25個の系外惑星のスペクトル分析を行う。
トレンブレーいわく、ミッション最大の課題は、恒星の光の抑制だ。系外惑星が反射した光を、中心星の光から分離する必要がある。
この光は惑星の大気を通過した後、何十光年もの星間空間を通りHabWorlds望遠鏡に届く。そして、余分な星光をほぼすべて除去した後、惑星大気から来る光を分析し、生命の兆候を示す分子の痕跡を探さなくてはならない、とトレンブレーは説明した。
望遠鏡の見た目はウェッブと似ているものの、日よけはつかないだろうという。