この分野の研究で世界最高峰といわれる米カーネギーメロン大学の博士号をもつ青木俊介と、将棋AI「ポナンザ」の開発者である山本一成が2021年に共同創業した。「テスラは製品力でイノベーションを起こし、人類を一歩前に進めた。自分たちも完全自動運転車を実現し、日本から新たな産業をおこしたい」と話す青木たちが目指すのは、目的地を告げるだけで、人間の補助なしにゴールまで連れていってくれるレベル5の完全自動運転車だ。
その実現には、人間の代わりに障害物などを認識し、即座に最適な行動を判断できる「脳みそ」=AIの搭載が不可欠となる。
これまで、高精度のセンサーで多くのものを認識し精緻な地図情報を覚えさせれば、いずれ自動運転は可能になると思われていた。が、「実際人間は思ったよりも高度な判断をしていて、そのルールをすべてプログラミングするのは不可能。つまり、脳みそそのものの精度を上げる必要があるんです」。
現在はAIのアルゴリズム開発のため、走行実験を繰り返しデータの取得を進め、今後は車体も開発・製造する自動車メーカーを目指す。「自動運転車の実現は、車好きのためじゃない。運転できなくて行動が制限されている人たちの可能性をエンパワーメントしていきたい」
あおき・しゅんすけ◎1989年生まれ。米カーネギーメロン大学でPh.D.を取得。帰国後にTURINGを創業し、共同代表/CTOを務める。国立情報学研究所助教。