しかし、バイオ医薬品分野への投資の減少幅は、前年比で23%のマイナスに留まっている。ヘルスケアへの投資は、パンデミックを受けて急増した後に2019年の水準に戻っただけだという見方もある。
そんな中、ヘルスケア領域に特化した新たなベンチャーキャピタル(VC)として注目を集めるのが、元ラックス・キャピタルのザベイン・ダル(Zavain Dar)らが設立した「ディメンション(Dimension)」だ。現在34歳のダルは、ヘルスケア分野には、バイオテクノロジーとソフトウェアの両方に精通した投資家が必要だと話す。
彼と同じく元ラックス・キャピタルのアダム・ゴールバーン(Adam Goulburn)と元オービアス・ベンチャーズのナン・リー(Nan Li)の3人は、ライフサイエンス関連とソフトウェア関連の両方にまたがるハイブリッド型のVCの設立を思い立った。
マクロ経済の逆風にもかかわらず、彼らはそのビジョンに共感する多くの投資家の支援を獲得した。ディメンションが3億ドルを募集した最初のファンドは12月にクローズし、目標額を上回る3億5000万ドルを調達した。「今回の調達がうまく行ったのは、業界のニーズに応え、これまでの学びに基づいた戦略を取ったからだ」と、リーは話す。
41歳のゴールバーンは、ディメンション投資戦略の中核に、研究プロセスにおいてデータサイエンスを重視し、同じ言葉で話せる投資家を求めている企業に資金を注ぐポリシーがあることを付け加えた。
「ライフサイエンス企業の研究開発費は、年間数千億ドルにも達するが、このカテゴリにはそれに特化したファンドが必要だ。起業家は、ライフサイエンスと計算生物学(computational biology)の両方に精通した投資家を求めている」
ディメンションは、現状ではシードやシリーズAに特化したアーリーステージのファンドだが、設立1年目にして、すでに4つの企業への投資を実施した。研究チーム向けのプロジェクト追跡ソフトウェアを提供する「Kaleidoscope Bio」、天然素材から医薬品を発見するAIツールを構築する「Enveda Biosciences」、研究所のデータプラットフォームを構築し、情報の共有を容易にする「Lamin AI」に加え、まだステルスモードの1社が存在するとゴールバーンは話した。
データサイエンスがライフサイエンス分野をデジタル化するプロセスは、まだ初期段階にあり、ディメンションは絶好のタイミングで投資を開始したとダルは考えている。「私たちは、このカテゴリのKPIを作成し、企業の変革を支援できることに興奮している」と彼は語った。
(forbes.com 原文)