「TGC」ブランドをシェアラブルに
村上 いま、SNSのおかげで日本中どこに住んでいても情報の格差はなくなりました。ところがエンタメを体験できる場所は東京や限られた都市だけで、「体験格差」はどんどん広がっています。TGCはいまや単なるファッションイベントに留まりません。2018年に国連ニューヨーク本部でSDGsや女性のエンパワーメント推進を発信するためのファッションショーを行ったり、発信力のあるモデルさんやタレントさんがステージ上で社会や環境分野で起きている課題について何かを発信することで、変わり続ける社会課題と若年層を繋ぐ架け橋の役割を担っているんです。このプラットフォーマーとしての役割は地方創生にも活用できる。東京で成熟した「TGC」というブランドをシェアラブルなものにして、地方に持って行くことができると考えたんです。
クレイ それは単にファッションイベントを地方に持っていくということなのか、それともTGCを通じてその土地の魅力を全国に発信していくことの、どちらですか?
村上 どちらも、です。日本には各地にそれぞれ素晴らしい名産や工芸品があるのに、それをうまくPRできていないと感じるんです。僕たちはイベントを持ち込みながら、同時に、その土地に眠る魅力をコンテンツ化して発信していこうというわけです。
クレイ それがTGCの地方創生プロジェクトなんですね。
村上 このプロジェクトは四つのことを重視しています。人材育成、伝統や地域名産物の発信と拡散、地域経済の活性化、そして他県や海外からの観光誘致です。
人材育成は地元の学生さんに運営に参加してもらったり、ランウェイを歩いてもらったり。学生さんがデザインした衣装をステージで発表することもあります。名産物、特産品の発信は、既存のものをアレンジすることに長けたモデルさんがステージ上やSNSなどで新しい見せ方を提案することで、新しい魅力や価値が生まれて再評価され拡散されていきます。地域の食材もシェフやパティシエが工夫したオリジナルなグルメやスイーツをコンテンツとしてショーのバックヤードに用意することで、それを食べたモデルさんたちがSNSで自由に発信していく。
TGCが地方に行くというのは、サーカス団が訪れるようなものかもしれません。サーカスのテントが張られている間、街はお祭り一色になる。駅を降りたら街中にTGCのポスターが展開している。TGCは地元商店街と連動して、一定額購入した人には入場チケットやグッズが当たるイベントなども行います。そうしてTGCを地方開催することは、外から観光客を集めることにもなるんです。
刺激的な「体験」がない、地方に行くとそんな声が聞こえてきます。その人たちの目の前でTGCのショーが始まると、涙を流すお客さんもいるんです。若い人たちは目を輝かせながら、ファッションの仕事がしたい、こういう夢をかなえたい、とそこから生きる活力を湧かせて大きな刺激を受けています。自分たちの街の魅力に気付けば、シビックプライドを醸成することになり、その土地と若い人に繋がりが生まれることになるんです。クレイ スモール・ジャイアンツの視点からもお聞きしますが、地方でイベントを運営、開催しながら、そういう企業の存在を感じることはありますか。
村上 各地で感じます。地域で一番のイベントをやるということは、そこに地域で一番の企業が参加してくるんです。
クレイ 私たちはそういう企業を知らないだけで、TGCのイベントを通じて、各地で力を持っている企業に光が当たり、そこから活性化の底上げにつながりそうですね。
クレイ勇輝 1980年、新潟県生まれ、神奈川県逗子育ち。2005年以降、音楽ユニット「キマグレン」、海の家の経営者、実業家といった多岐にわたる活動を経て、現在は事業家、アーティスト、プロボクサーとして活躍中。