家畜への抗生物質使用が増加、人のスーパー耐性菌まん延の原因に

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米国だけでも毎年280万件以上の耐性菌による感染症が発生し、3万5000人超が死亡しているとCDCは推定している。また、医療現場でよく見られる6種類のスーパー耐性菌が原因の感染症の治療費は年間46億ドル(5910億円)以上とのことだ。スーパー耐性菌の進化は自然なもので、時間の経過とともに予想されることだが、人と動物に対する抗生物質の誤用や過剰使用はこのプロセスを早めている。

農業分野、特に健康な動物の成長促進や病気予防のための乱暴な使用は、耐性の主原因となっている。いくつかの国では、この部門が医療上重要な抗生物質の総消費量の約80%を占めているとWHOは見ている

2050年までに耐性菌の感染症で死亡する人は年間1000万人に上ると専門家は推定する。これらの死者の大半は貧しい国々の人々で、その多くはかつては治療できた感染症が原因となると予測されている。

専門家は、新型コロナウイルス感染症の大流行時に抗生物質が過剰かつ不適切に使用されたため、世界各国における薬剤耐性との戦いの長年の進展が帳消しになったと警告している。CDCの推定によると、米国では2019年から2020年にかけて耐性菌の感染と死亡が増加したが、これは主に病院に端を発した感染症が15%急増したためだ。CDC所長のロシェル・ワレンスキー博士は報告書の序文で、耐性は 「新型コロナの大流行以前からの公衆衛生上の最大の懸念事項の1つであり、現在もそうだ」と述べた。

進化と微生物の生物学的性質、そして本質的に世界どこででも起こるという性質、健康に関する多くの異なる領域の交差が耐性を監視し、それがどのように出現して広がるか予測するのを難しくしている。データによると、問題の規模は2050年までに年間1000万人が死亡するという予測をすでに超えている可能性がある。

医学誌『Lancet』に昨年発表された報告書によると、2019年に抗生物質耐性菌による感染症を直接の原因として世界で約127万人が死亡した。この死者数は細菌感染のみを考慮したもので、新型コロナのパンデミック以前からこれまでで最も包括的な推定に基づいている。この数字は人免疫不全ウイルス(HIV)/エイズ(AIDS)やマラリアといった主要な病気による死者をすでに上回っている。薬剤耐性の感染は2019年に別の500万人の死亡にも関わっていると報告書は推定している。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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