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2023.02.14

〈寄稿〉これからの「企業の持続可能性」──指標を通して考える企業のあり方

100年以上の時を歩んだ企業はどんな景色を見てきたのか?これからの時代を生き抜く持続可能な企業のあり方とは?さまざまな「持続可能性」の考え方を、用語や指標とともに100年企業戦略研究所 主席研究員の安田 憲治が解説する。(本記事はボルテックス100年企業戦略オンラインに掲載された記事の転載となります)。


100年に1度と呼ばれる危機が頻繁に発生するVUCAの時代

近年「100年に1度と呼ばれるような危機が、頻繁に発生している」と、いたるところで言われている。ビジネスの文脈においては「VUCA(Volatility変動性, Uncertainty不確実性, Complexity複雑性, Ambiguity曖昧性)」という、未来の予測が難しいことを示す言葉が、日本では2015年頃から使われるようになった。

このような時代のなかでも、日本には創業から100年以上経つ企業が数多く存在し、その数が増えている。日経BPコンサルティングの集計によれば、2022年8月時点で、創業から100年以上経つ企業は37,085社(世界に占める割合50.1%)、創業から200年以上が経つ企業は1,388社(世界に占める割合65.2%)と、圧倒的な数となっている。これらの企業は「老舗企業」と呼ばれるが、「老舗」は「仕似せる」に由来する言葉で、「先祖代々の家業を守り続けること」「信条を守りながら長く商売を続けて信用を得ること」という意味が含まれている。

過去100年で移り変わった経済規模の順位

老舗企業が歩んできた過去100年の経済について、実質GDP(物価変動の影響を取り除いた国内総生産)という指標で見てみよう。

今から100年前の1923年は、関東大震災によって0.0%という横ばいの成長率であり、その後は継続的に成長をしていたなか、世界恐慌と太平洋戦争の際にはマイナス成長を経験した。今から50年前に、1955年頃から1973年まで年平均9.1%の成長率を記録した高度経済成長期が終わり、1974年は原油価格の高騰により戦後初のマイナス成長を経験した。その後、バブルが崩壊するまでは4.5%の成長、以降は平均すると1%にも満たない低成長を経験してきた。

経済規模の順位で見ると日本は、1968年から2009年にかけて、経済活動の水準そのものを示す名目GDPで、アメリカに次いで世界第2位であった。2010年に中国と順位が入れ替わって第3位となり、IMF(International Monetary Fund, 国際通貨基金)の経済見通しによると2023年には現在第4位のドイツが日本の水準に近くなり、ドイツが著しく成長を遂げたり、ドル円相場で円安に振れたりなど、条件が重なれば日本が第4位となる可能性も出てきた。

また、企業の世界時価総額トップ50社では、1989年にはそのうち34社を日本が占めていたところ、2022年はトヨタ自動車1社となっている。このような指標から、日本経済の大きな流れや、世界における日本の位置が移り変わってきたことを見て取ることができる。

持続可能な社会や企業を目指す、取り組みや考え方の変化

国力が移り変わるとともに、持続可能な社会や企業を目指す、取り組みや考え方も変化してきている。1980年にIUCN(The International Union for Conservation of Nature, 国際自然保護連合)が、WWF(World Wide Fund for Nature, 世界自然保護基金)などの協力を得て、地球環境保全と自然保護の指針を示す「世界保全戦略」を作成した。これは、いかに自然資源の開発を行うかに関する戦略であり「持続可能な開発(Sustainable Development)」の概念を初めて公表したものとして知られている。

そして、現在広く知れ渡っている「SDGs(Sustainable Development Goals, 持続可能な開発目標)」は、2015年から2030年までに達成すべき国際目標である。「誰一人取り残さない」持続可能な社会を目指し、「17ゴール」「169ターゲット」が定められている。2015年までに達成すべき国際目標を定めた前身のMDGs(Millennium Development Goals, ミレニアム開発目標)と比べて、企業や個人が取り組みやすいよう課題が設定されている。

「ESG(Environment環境, Social社会, Governanceガバナンス)」も、持続可能な社会を目指す言葉で、主たる対象を企業や投資家としている。「インパクト投資」は、金銭的なリターンを得ようとすると同時に、ポジティブで測定可能な社会的・環境的価値の創出を意図する行動だ。まだまだ聞き慣れない方も多いかもしれないが、日本では2016年以降、著しく市場が拡大してきている。「パーパス経営」は、「社会においてどのような存在意義があり、いかに貢献するのか」を掲げて経営を行うスタイルを指す。持続可能な社会を築いていくうえでの有効な企業の在り方として、現在注目されている。そして、経済産業省が提案する「SX(Sustainability Transformation, サステナビリティ・トランスフォーメーション)」は、これらの持続可能性に対する考え方を包括し、2030年以降をも見据えた指針として期待が高まっている。

「持続可能性」の考え方も変化している

持続可能性についての考え方も、変わってきている。IUCNによって世界保全戦略が示される以前は、「環境」「社会」「経済」は別々に存在するものと認識され、経済で得た利益を環境や社会に還元するような社会貢献活動が数多く行われた。その後、徐々に経済活動を環境や社会と分けて考えることが現実的でなくなり、現在ではそれらを三位一体として捉えて経営を行うことが必要になっている。

老舗企業の特徴と、今後企業が持続する秘訣

ここまで、企業を取り巻く環境が変化してきていることを述べてきた。老舗企業は長年にわたって環境変化に対応していることになるが、創業からの年数と財務規模は比例しない特徴がある。財務規模のピークが1度とは限らないし、非財務価値(ブランドや人材など、財務諸表には出てこない企業の価値)が100年以上経ってより輝きを増す企業は数多く存在している。

そのような老舗企業の経営に携わった方がよく使う言葉に「三方よし」がある。「売り手」にも「買い手」にも「世間」にもよい商売をするという、中世から近代にかけて活躍した近江商人の活動の理念である。現在グローバル化が進展し、企業は地球規模で買い手や世間について配慮する必要が出てきた。また、「環境や社会に配慮した経営を行うことが、長期的な利益や発展に繋がっていく」という考え方が広まってきている。これからの時代は「三方」の広がりと「よし」の深ぼりを意識して判断を積み重ねていくことが、企業が持続する秘訣となっていくだろう。
 

安田 憲治(やすだ けんじ)◎一般社団法人 100年企業戦略研究所 主席研究員。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。塩路悦朗ゼミで、経済成長に関する研究を行う。大手総合アミューズメントメント企業で、統計学を活用した最適営業計画自動算出システムを開発し、業績に貢献。データサイエンスの経営戦略への反映や人材育成に取り組む。現在、株式会社ボルテックスにて、財務戦略や社内データコンサルティング、コラムの執筆に携わる。多摩大学社会的投資研究所客員研究員。麗澤大学都市不動産科学研究センター客員研究員。


本記事は「100年企業研究オンライン」に掲載された記事の転載となります。元記事はこちら

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