先代プリウスのもう一つの弱点は加速性だった。でも、トヨタは今回かなり力を入れた。まずは、1.8リッターのガソリンエンジンを2.0リッターに変え、電気モーターの容量をかなり増やすことによって、121hpだったのが、196hpにパワーアップした。2.0リッターの2WD仕様は320万円からだ。ちなみに、270万円台という低価格を保持するために、トヨタは1.8リッター仕様を残しているけどね。
また、HEVというハイブリッドと、PHEVというプラグイン・ハイブリッドの2タイプがある。PHEV仕様は当然、EVモードで走行する時の航続距離がHEV仕様より長いし、自宅で充電できるけど、僕はHEV仕様で十分だと思った。
つまり、ハイブリッドシステムのパワーはなんと60%以上増えている。そのおかげで、先代の0-100km/hの加速の10秒に対して、新型の0-100km/hは7秒! しかも、燃費は先代と全く変わらない。それは大きなセールスポイントだね。発進時の加速もだいぶ向上したし、高速道路での気楽な合流などにこのパワーはかなり効果的。また、2WD仕様でも、4WD仕様でも、気持ちの良い加速をしてくれる。
今回、向上したのは、気持ちよい加速だけではない。コーナリング性能も乗り心地、それに静粛性も全て良くなっている。先代よりもコーナーではロール性を抑えているし、ステアリングはより手応えがあって路面からのフィードバックをしっかり感知している。乗り心地はしなやかだけど、先代よりも多少スポーティになっているのが気持ちいい。
そして、遮音材などを採用することによって、通常の走りでの静粛性は先代より若干向上している。また、ブレーキ性能にも手が加えているので、効き目とペダルフィールが良くなった。
簡単にいうと、今回のプリウスの企画は、「プリウスを再び好きになるように」という考え方のようだ。デザインも格好良くし、加速性を60%パワーアップし、しかも、面白いことにデザイナーが思い切り遊び心を見せた。オーナーに向けてよりアピールするために、20個以上の「隠れ絵」や「隠れ言葉」を採用している。
例えば、センターコンソール下の隠れボックスには、「#Hidden Compartment」、携帯の充電スペースに、「#Wireless Charger」、リアのテールゲート内に「Prius Reborn」などが書かれている。「オーナーが自分の手で洗車する時などに、その隠れた言葉を見つけたら楽しいだろうと思って」と、デザイナーが言う。なるほど。新しい試みだ。
言うまでもなく、トヨタ・セーフティ・センスという最新の安全装備もついているし、アドバンスト・パークは並列・縦列駐車のパーキングを楽にしてくれる賢い機能もある。
「アヒルの子」は、美しい白鳥に変身した。ずっとトヨタ嫌いだった友人でも、「このプリウスなら、買ってもいいと思うよ」とまで言う。信頼度の高いトヨタ車にこのように美しさが加われば、世界的な競争力も増す。僕も、生まれて初めて「このトヨタ車なら、買ってもいいな」と考えた。
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