北米

2023.02.03

新たな研究が示す、米国で景気後退が差し迫っていない理由

Getty Images

一部のアナリストは、筆者が数カ月前から認識していたことにようやく気づき始めたらしい。それは、米国の経済は減速しているものの、不況が差し迫っていることを示す兆候はほとんどない、ということだ。

ミズーリ大学とインディアナ大学の研究チームによる新たな論文も、2023年の経済は減速するものの、これが不況につながる可能性は低いとの見方を裏付けている。

「ジ・アカウンティング・レビュー(The Accounting Review)」にまもなく掲載予定のこの論文は、「Aggregate financial misreporting and the predictability of U.S. recessions and GDP growth(累積的な虚偽の決算報告と、米国の景気後退およびGDP成長率の予測可能性)」というタイトルで、財務諸表の不正操作の件数と、米国の景気後退のあいだに相関関係があることを示す内容だ。

結論を非常に簡単に要約すると、米国のビジネス界では、企業の幹部が粉飾決算を行う件数が増加すると、不況のリスクが増大する、ということになる。

インディアナ大学のメソド・D・ベニッシュ(Messod D. Beneish)とデイヴィッド・B・ファーバー(David B. Farber)、ミズーリ大学のマシュー・グレンドニング(Matthew Glendening)とケネス・W・ショー(Kenneth W. Shaw)という4人の研究者によって執筆されたこの論文には、こう記されている。

「甘い監視体制は、虚偽の決算報告を生む温床となり、さらに、虚偽報告自体が実体経済の活動に影響を及ぼしうるとする、理論的および実証的研究に、我々の研究は依拠している」

言い換えれば、違法な粉飾決算を行う企業を、規制当局が厳しく取り締まらないようであれば、企業による粉飾がさらにエスカレートする可能性が高まる。その結果、経済全体に悪影響が出るという流れだ。

これは納得できる話だ。2000年前後のドットコム不況のさなかには、企業による不正会計が次々と明るみに出た。エンロン、タイコ、ワールドコム、アデルフィアなどの有名企業に加えて、こうした会社ほど知名度は高くない多くの企業も、不正会計に手を染めた。

信頼できない会計報告の事例が増えた後に、景気後退が起きる理由は明白だ。それは投資家が、株式市場システムに対する信頼を失ってしまうからだ。

企業の発表が信じられないとしたら、そこに投資しようなどと誰が思うだろうか? それでも投資するとしたら、株の購入は、経済の成長を後押しする行動ではなく、ギャンブルに近いものになってしまう。

投資家たちは、2000年代初頭には株式市場から一時的に資金を引き上げたが、幸い、その後は米国株式市場への信頼を取り戻し、経済は再び成長へと転じた。
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翻訳=長谷睦/ガリレオ

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