ミズーリ大学とインディアナ大学の研究チームによる新たな論文も、2023年の経済は減速するものの、これが不況につながる可能性は低いとの見方を裏付けている。
「ジ・アカウンティング・レビュー(The Accounting Review)」にまもなく掲載予定のこの論文は、「Aggregate financial misreporting and the predictability of U.S. recessions and GDP growth(累積的な虚偽の決算報告と、米国の景気後退およびGDP成長率の予測可能性)」というタイトルで、財務諸表の不正操作の件数と、米国の景気後退のあいだに相関関係があることを示す内容だ。
結論を非常に簡単に要約すると、米国のビジネス界では、企業の幹部が粉飾決算を行う件数が増加すると、不況のリスクが増大する、ということになる。
インディアナ大学のメソド・D・ベニッシュ(Messod D. Beneish)とデイヴィッド・B・ファーバー(David B. Farber)、ミズーリ大学のマシュー・グレンドニング(Matthew Glendening)とケネス・W・ショー(Kenneth W. Shaw)という4人の研究者によって執筆されたこの論文には、こう記されている。
「甘い監視体制は、虚偽の決算報告を生む温床となり、さらに、虚偽報告自体が実体経済の活動に影響を及ぼしうるとする、理論的および実証的研究に、我々の研究は依拠している」
言い換えれば、違法な粉飾決算を行う企業を、規制当局が厳しく取り締まらないようであれば、企業による粉飾がさらにエスカレートする可能性が高まる。その結果、経済全体に悪影響が出るという流れだ。
これは納得できる話だ。2000年前後のドットコム不況のさなかには、企業による不正会計が次々と明るみに出た。エンロン、タイコ、ワールドコム、アデルフィアなどの有名企業に加えて、こうした会社ほど知名度は高くない多くの企業も、不正会計に手を染めた。
信頼できない会計報告の事例が増えた後に、景気後退が起きる理由は明白だ。それは投資家が、株式市場システムに対する信頼を失ってしまうからだ。
企業の発表が信じられないとしたら、そこに投資しようなどと誰が思うだろうか? それでも投資するとしたら、株の購入は、経済の成長を後押しする行動ではなく、ギャンブルに近いものになってしまう。
投資家たちは、2000年代初頭には株式市場から一時的に資金を引き上げたが、幸い、その後は米国株式市場への信頼を取り戻し、経済は再び成長へと転じた。