おむつメーカーなどは、出生数が多ければ収益が上がる。一方、老人ホームの運営会社などは、平均寿命が伸びることが有利に働く。人口動態がビジネスに与える影響を理解する上で大切なのは、どの人口区分が自社にとって最も重要かを知ることだ。
ビジネスでは通常「顧客第一」が掲げられるが、従業員も同じく重要だ。米国では現在、労働市場がひっ迫している。2020〜30年の10年間の労働年齢人口増加率は、1860年代の南北戦争以降で最低となる見通しだ。
人口の変化は非常に緩やかなため、見逃されがちだ。出生率が下がってもメディアで大きく取り上げられることはない。それでも、人口動態がもたらす影響は大きい。
現在の労働力不足は、新型コロナウイルス流行以前から起きていた。また、ベビーブーム世代の退職は60年前に予見できたはずだ。移民の減少など、近年で小さな変化はあったものの、全体的な傾向はかなり前からはっきりしていた。
企業は、年間人口動態の簡単な評価から始めると良い。主要な顧客層はどの人口区分なのか? 小売業の場合は、買い手が顧客になる。例えば、おもちゃの販売は、子どもの数と、保護者の経済状況に左右される。
米では、国勢調査で年齢や性別ごとの情報が大量に収集される。特定地域で展開するビジネスの場合、国勢調査局の持つ州や郡、大都市圏のエリアデータを活用できる。これとは別に、独自の機関を持って人口動態の推計や予測を実施する州も多い。
人口動態評価を年に1度実施することには、少なくとも2つのメリットがある。第1に、自社に収益をもたらす人口区分についての定期的な見直しができる。1年以上経つと、製品やサービスが変化し、顧客層にも変化が生じる可能性がある。
第2に、経営陣は革新的なチャンスや新たに出現する脅威に気を取られる傾向がある。だが人口はゆっくり推移するため、年次評価を実施することで、経営陣は人口動態の重要性を再認識できる。さらに3つ目のメリットとして、移民や伝染病の影響などにより一部の人口区分で急激な変動が起きる場合がある。
人口動態はニュースになることがほとんどないが、その影響は大きい。米国の失業率が8%だった10年前、将来的に大きな人材不足が起きることをビジネスリーダーたちが認識していたら、人事施策が改善されていたかもしれない。
将来的な変化を見込んで方針や取り組みを調整できた企業は、人手不足に悩むライバル企業を大きく引き離すことができたに違いない。
(forbes.com 原文)