政治

2023.02.03 17:00

「蛍の光」と日中関係

もうひとつ、Auld Lang Syneをかみしめたい相手が中国だ。昨年は日中国交正常化50周年というのに、両国ともにほとんど盛り上がらなかった。コロナ禍もあるが、底流には根深い相互不信がある。

中国の外交関係者が口をとがらせる。「日本側は、中国との関係強化を望むと言い、首脳会談の地ならしが進んでいたのに、その舌の根も乾かぬうちに米国と中国包囲網をつくろうとしている。我々は岸田さんを信用できなくなるよ。中国がいちばん神経質になっている台湾には、与党の議員が大勢訪れるしね」

日本からしてみると、中国は、友好だ、良好な関係維持だと言いながら、尖閣での威嚇は増すばかりだし、日本の領空付近にロシアと共同の軍用機を飛ばし、北朝鮮のミサイル乱射にも無反応だ。台湾を巡る言動も、日本の安全保障上、大いに気になる。

加えて、米中摩擦が深い影を落とす。いまの日本に、米国か中国かの二者択一を突きつけられれば、米国を選ばざるをえない。勢い、対中関係には慎重になる。

だが、ここはひとつ冷静かつ深い思慮が必要だ。日本と米国の利害の多くは共通するが、日本独自の国益もある。すべて米国に合わせていればよいというほど単純ではない。経済安全保障問題に従事する日本の高官が、米国の安全保障=日本の国益ではない、と断言していたが、誠に正しい認識である。

また、日本の対中関係は米中ほどに先鋭的ではない。米中の間に立ってその摩擦を弱める役回りをこそ演じるべきではないか。それができて初めて日本は自立する。

今年は、日中平和友好条約締結45周年にあたる。中国側に、ともにAuld Lang Syneを歌おうともちかけられないか。さらに米中と、その最後の歌詞を唱和できれば最高である。

There's a hand my trusty fiere and gie's a hand o'thine!

淡い初夢に終わらせたくないものだ。


川村雄介◎一般社団法人 グローカル政策研究所 代表理事。1953年、神奈川県生まれ。長崎大学経済学部教授、大和総研副理事長を経て、現職。東京大学工学部アドバイザリー・ボードを兼務。

文=川村雄介

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