2022年7月13日、マイクロソフト共同創業者で慈善事業家のビル・ゲイツは、一度の寄付額としては史上最大級となる200億ドル(日本円で約2兆7000億円、発表当時のレート)の寄付を発表した。
元妻のメリンダ・フレンチ・ゲイツと共同で運営している財団(ビル&メリンダ・ゲイツ財団、以下ゲイツ財団)に自身の資産から譲渡するもので、これにより、ビルとメリンダのこれまでの生涯寄付金額は550億ドル(7兆4250億円)となり、ふたりは史上最大の慈善家になった(編集部注:その後のゲイツ財団の発表で、ふたりの生涯寄付金額は590億ドルに引き上げられた)。
これまで総額480億ドルを主にゲイツ財団に寄付した、ふたりの友人でもある米著名投資家ウォーレン・バフェットの金額も追い抜いた。
この寄付が現実世界に与えるインパクトは途方もなく大きい。これを受けて、世界最大の規模を誇るゲイツ財団の年間の資金拠出額は、現在の60億ドルから2026年までに50%増の90億ドルに引き上げられる。
「今回の寄付は、私たちが行っているほぼすべての活動を促進させる、あるいは加速させ、充実させ、増幅させることになる」
ゲイツは200億ドルの寄付発表の前日、7月12日に行われた米フォーブスの独占インタビューで、こう語った。
今回の寄付は、ジェンダー平等や疾病の根絶、乳児死亡率の低減をはじめとする、ゲイツ財団が特に力を入れてきた取り組みに対する資金拠出が年間30億ドル増えること以上の意義がある。世界の大富豪たちに向けた、11桁の寄付金というかたちを取った「意思表示」にもなっているからだ。
多くの大富豪の慈善事業家は、ただ寄付金を積み上げ、何世代もの管理者たちが彼らの名のもとに何世紀もかけてその寄付金を少しずつ拠出できるようにする。しかし、ゲイツは、自分たちの寄付をもっと積極的に有効活用する必要があると訴えているのだ。
「まるで、自分たちの財団の存続期間を最大限に延ばそうとしているかのようです。それよりも、大きなインパクトをもたらすためにいまできることはないか、と考えるべきなのです」(ゲイツ)
ゲイツの寄付額が急激に増えているのも、彼が「生きている間に寄付をする」という主義を実践していることを裏付けているものだ。
この主義の代表的な実践者であるチャック・フィーニー(91)は免税店チェーンのデューティ・フリー・ショッパーズ(DFS)の創業者だ。だが、彼の名前は長者番付の「フォーブス400」にはもう載っていない。80億ドル以上を寄付する過程で、無一文に近い状態まで資産を減らしたからだ。
ゲイツは現在、自身の死後まで待たずに、存命中にフォーブスのビリオネアランキングから確実に脱けるつもりだと語る。今回の寄付により、ゲイツは番付で順位を1つ落として第5位になった(22年7月13日現在)。ゲイツ財団を除いた純資産額は約1020億ドルになった。