あらゆるシーンに対応できる適応力
そしてダメを押すのが、この製品が”使いこなし不要”な製品であることだ。スピーカーはオーディオ製品の中でも、もっとも使いこなしが難しい製品だ。置き方、置く場所で音が変わり、部屋のレイアウトなどによって最適な位置も替わる。しかしHome Podは自身の音をモニタしながら常に自動調整する。
さらに正面から聴くとステレオイメージや立体音響を楽しめるが、だからと言ってスイートスポットが狭いわけではない。部屋のどの位置にいても大きな質感の劣化なく音楽を楽しめる。
ストリーミング配信で日常的に音楽を楽しめる環境がある中、部屋の中のどこでも心地よく音が聞こえることはとても重要な特徴と言えるだろう(もっともこれは初代モデルから持っていた特徴でもあるが)。
さらにアップルは1000シーンの設置環境において、それぞれ1万曲の様々な音楽について評価し、音質的にバランスが取れ、破綻しないよう機械学習を施している。Home Podはこの推論メカニズムに従って、人知れず音質を最適化し、Home Podの再生能力を最大限に活かし、心地よさを失わないよう調整しながら再生するのだが、それは音楽だけではない。
映像作品の音声ではセリフが明瞭に聞こえ、音楽再生時には自然な表現(つまりあまり無理して量感を演出しない)だったものが、しっかりと低域エフェクトの効果を出して、シーンごとの雰囲気を演出してくれる。
しかも大画面にも対応できる大きな音場で包んでくれるから、あるいは空間オーディオ再現のパラメータも音楽とは変えているのかも知れない。
狙うのは”AirPodsの再現”か
筆者が試した環境下において、第二世代Home Podは極めて純粋にオーディオ的な音を出したかと思えば、高品位なAVシステムにも見合う空間オーディオでの音場を生み出した。音質面の評価は今後固まってくるだろうが、アップル製スピーカーに対する評価はこの製品で一変するだろう。それは時間の問題だと思うが、さらにその先にはAirPodsが成したような家庭向けスピーカー市場のイノベーションも待っている。人々がAirPods以降、完全ワイヤレスステレオから離れられなくなったように、第二世代Home Pod以降、製品選びの基準が変わる可能性があるからだ。
ワイヤレススピーカーが常識となり、部屋の隅々まで音楽で満たしつつも、2台だけで本格的なシアターサウンドを実現できる立体音響技術が搭載されるのは当然として、置いただけで適応的に音質を調整することが必須になっていく。
競合は現れるに違いないが、いずれ数年もすれば業界の景色は大きく変化していることは間違いなさそうだ。