「フェス」ビジネスに異状あり。コロナ制限撤廃でも元の姿には戻らない


大型化したブランドが更なる成長を遂げている反面、中小規模のフェスはアーティスト編成や製作費の面で競争力を失い、淘汰されている。

アーティスト側の事情にも、変化がある。従来はフェス出演を自らの新譜のショーケースとして位置付け、そこまで高額のギャラを求めることはなかったが、昨今CDが売れなくなり、サブスク・サービスからのロイヤルティだけではその埋め合わせが叶わないため、ライブでの収入に大きく依存するようになっている。

したがって、大手興行2社がそれぞれ所有する複数のフェス出演を通年一括契約でアーティストにオファーすることが、双方にとって好都合であり、新規参入の難易度が高まっているのだ。
コーチェラ・フェスティバル2022でパフォーマンスする、ビリー・アイリッシュ(Photo by Kevin Mazur/Getty Images for ABA)

コーチェラ・フェスティバル2022でパフォーマンスする、ビリー・アイリッシュ(Photo by Kevin Mazur/Getty Images for ABA)


また、国内フェスでもここ数年、従来のように海外のメジャー・アーティストを招聘することが難しくなっている。

世界第2位のCD市場だった以前の日本でなら、プロモーションの観点からギャラの額に関わらず、フェス出演のリターンが期待できたが、洋楽CDの販売は下降線を辿るばかり。

今では自前のツアーで立ち寄る方が経済効率が高く、特に大物になればなるほど、フェスのみの来日にはなかなか応じなくなっているからだ。

このため国内フェスは、以前は編成に加えていなかった韓流、そしてアニソンやDJなども新たに組み入れ、「洋楽と邦楽」の共演から、「韓流と国内アーティスト」主流のイベントへと、姿を変えつつある。

そして、その間隙を縫って、AEGとライブネーションが日本への大型フェス、フランチャイズ進出を虎視眈々と狙っていることは言うまでもない。

連載:スポーツ・エンタメビジネス「ドクターK」の視点

文=北谷賢司 編集=宇藤智子

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