企業はこうした点を踏まえ、医療の提供に関するアプローチを変化させるとともに、優先的に解決すべき問題を見極めようとしている。それでも医療界は、高品質な医療への需要がこれからも消えないことを確実に理解している。
米ディスカウントショップ大手ダラー・ゼネラルが機会を見出したのがこの分野だ。従来小売が専門の同社は先日、移動式医療サービスを提供するドックゴー(DocGo)と提携し、基本医療サービスを提供すると発表した。
ドックゴーは比較的若い企業で、訓練を受けた医療提供者や安定した輸送・物流ネットワーク、高度なデータ・人工知能(AI)基盤など、さまざまな強みを持つ。同社では、患者が診療所に出向くことなくその場で治療を受けられるよう、医療提供者を派遣することも可能だ。
ダラー・ゼネラルはドックゴーとの提携により、店舗外で迅速かつ簡単に診察を受けられるようになると説明している。サービスとしては、健康診断や定期検診などの予防医療に加え、糖尿病やぜんそく、高血圧など慢性病の管理も提供される。
ダラー・ゼネラルの今回の取り組みが、売り上げ向上と事業の多角化を目指す同社の戦略に沿ったものであることは間違いない。両社の提携が患者や消費者にもたらす価値は比較的明快だ。
病気のケアや処方箋の再購入は、この新事業を通じ、日用品や食品のちょっとした買い出しと同じくらい楽にできるようになる。新型コロナウイルス感染症が流行を始めてから、手軽に医療を受けられることの重要性が高まっていることを踏まえれば、消費者はこのサービスを確実に重宝するだろう。
このモデルを実験中の小売企業はもちろんダラー・ゼネラルだけではない。米小売大手ウォルマートは過去2年間、店舗での医療サービスを大きく拡充してきた。同社も、顧客が医療を手頃かつ楽に受けられるようにすることで利便性を高めようとしている。医療と小売のビジネスは共生の関係にあり、一方の客足が増えれば他方も増えることが期待されている。
企業は便利な場所で医療を提供するだけでなく、価格の透明性や検査の所要時間・待ち時間の短縮、顧客サービスの改善などを通じ、患者の医療のプロセス全体をより簡単にすることを今までにも増して目指している。
この意味では、顧客サービスよりも治療がもたらす結果の改善が長年中核目標とされてきた医療界は、破壊の機が熟している。優れた治療結果だけでなく、素晴らしい顧客サービスや利便性を求める現代社会に対応する上で、これまでのやり方では不十分だ。
ダラー・ゼネラルのドックゴーとの提携は、今後数カ月から数年にわたり注目する価値がある。米全土で1万8000店以上を運営するダラー・ゼネラルは、このサービスをビジネスの視点から成長させるのみならず、人々に便利で手頃な医療を提供できる点でも大きな可能性を秘めている。
(forbes.com 原文)