それでも、セコイアは今がシード投資をさらに強化すべき時期だと考えている。VCが集積するサンドヒル・ロードに本社を構えるセコイアは、1月18日に1億9500万ドル(約253億円)のシードファンドを新たに組成したと発表した。同社は、2023年に「Arc」(同社のアクセラレータプログラム)を昨年の2バッチから3バッチに増やす計画も明らかにした。
「セコイアの過去の投資実績を振り返ると、最も成功した企業の多くは、現在のような不確実性の高い時期に設立された」とリーは話す。同社は、2008年の金融危機の際、投資先企業を集めて「R.I.P. Good Times(良き時代の冥福を祈る)」というメッセージを発したが、その翌年にエアビーアンドビーにシード投資したことは、シリコンバレーの伝説となっている。
しかし、現在の不確実性が、2000年や2008年と比べてもはるかに大きいことはリーも認めている。インフレやウクライナ戦争、米中関係の悪化といった状況下で、VC投資家が明確な道筋を描くことは困難になっている。「様々な要因が、同時期にぶつかり合う状況は前代未聞だ」と彼女は言う。
他のVCに比べてセコイアが特に大きな打撃を受けたのは、成熟したテック企業の株価の暴落だ。同社は、2021年にトップに就任したロエロフ・ボサ(Roelof Botha)の主導のもとで戦略を転換し、投資先企業の株式を上場後も保有できるエバーグリーンファンドを設立した。しかし、ドアダッシュやユニティなど、同社を代表する投資先企業の中には、株価がピーク時から70%以上下落したものもある。さらに、FTXの破綻により、セコイアは2億ドルもの減損処理を強いられるなど、同社は昨年大きな打撃を受けた。
リーによると、セコイアは株式市場の低迷の影響を最も受けにくい初期段階のスタートアップへの投資割合を増やしており、シード投資の強化を図っているという。
「我々は、これまでのやり方を堅持しながら、異端児的な創業者を見つけようとしている」とリーは話す。セコイアの考える「異端児」とは、経歴がユニークであったり、マイノリティ出身といったこととはほとんど関係なく、重要なのは卓越したビジョンを持っていることだという。彼女が例に挙げるのは、マーク・ザッカーバーグや、フォーブスが2020年の「次世代のスタートアップ企業25社」に選んだリップリング(Rippling)のパーカー・コンラッド(Parker Conrad)などの起業家だ。