特にZ世代では16~26歳のうち35.6%が推し活を楽しんでいるというデータもあり(日経MJ、2022)、多くの人にとって身近な存在かもしれない。
実際にTVerは好調で、2022年12月には2528万MUB(Monthly Unique Browsers:1カ月にアクセスしたブラウザ数)と過去最高を更新した。コロナ禍の巣篭もりといった需要が落ち着いた2022年だったが、売上高も4月~12月で対前年比 291%と好調だ。
同社の若生伸子社長によると、急成長の理由のひとつに「推し活」があるという。
TVerの若生伸子社長
ドラマに強いTVer
TVerは、一部テレビ番組のリアルタイム配信と、見逃し配信が原則1週間限定で無料視聴できるサービス。全国115の放送局から、レギュラー番組だけでも常時約600番組を配信している。最もよく見られているコンテンツはドラマで、特に2022年は「silent」(フジテレビ)や「クロサギ」(TBS)などヒットドラマが多かった。
「これらのドラマの多くは、クール期間中に第1〜第3話を常に見られるようにしました。これによって、冒頭を見逃した視聴者が追いつけたことが、ドラマ自体の好調につながったという分析もあります」と若生。
また、TVerオリジナルコンテンツとして、スピンオフ番組やオリジナル番組も配信している。例えば「silent」のスピンオフドラマ「4話エピソード0~紬と想と湊斗、8年前のある出来事~」が、ドラマの人気とともに話題になった。
12月9日にはTVer初の完全オリジナル番組「最強の時間割 ~若者に本気で伝えたい授業~」がスタート。今年1月14日からは、初の一社提供オリジナルバラエティ番組「褒めゴロ試合」も独占配信している。
森田哲矢(さらば青春の光)・若槻千夏の2人をMCに起用した、完全オリジナルバラエティ番組「褒めゴロ試合」。佐久間宣行プロデューサーが制作した。KINTOの一社提供
「推し活」にはかかせない存在に
視聴の傾向として、Z世代を中心にニーズがあるのが「推し活」での利用だ。TVerであれば、テレビで録画予約をしなくても、見逃した「推し」の番組を観ることができるほか、若い世代ならではの“倍速視聴”“2窓視聴”といったニーズにも対応している。「Z世代では特に“タイパ”(タイムパフォーマンス)が重要と言われ、このような習慣が当たり前になってきています。家に帰ってきてテレビの前に座って録画を見るより、手元にあるデバイスで好きなときに見れるほうが効率的、という考え方ですね」
また、「推し活」視点では、次に始まるドラマの予告編もよく見られているという。
「キャストや作品、脚本家などのファンの方々が予告編を見て、ツイッターなどのSNSで情報を拡散してくださっています。まさに“推し活”ですね。こうした動きがみられるからこそ、もっとコンテンツの見せ方・置き方・楽しみ方を考えて、充実させていくことが大事だと思っています」