経営・戦略

2023.02.03 18:30

8年間、社員全員に手紙を書き続けた ポケトークの組織づくり #3

露原直人

社員全員に誕生日会で手書きメッセージ

──ほかに何か意識されていたことはありますか?

経営者と社員との距離は、組織が大きくなるにつれてどうしても離れていくものです。ですので、組織が大きくなるほど経営者の求心力を保つ工夫が求められます。

私の場合は、誕生日会を毎月ずっと開いて、社員一人一人に手書きのメッセージを贈るということを8年くらいずっとやっていました。

そのメッセージを通して、会社の向かっている目標、個人への期待を明確にしてあげる。例えば「あなたは執行役員を目指してください」などです。

ここでポイントは「悪いことは絶対書かない」ことです。「あなたはここを改善してください」って誕生日にメッセージ貰っても誰も嬉しくない(笑)。

誕生日おめでとうございますということと、「あなたのここにすごく助けられました」とか「ここが良かったので、今後はこういうのに期待しています」と書いてあれば、目指す方向も分かるし、期待されているのが分かって嬉しいですよね。

経営者が意識しないといけないのは、部下は思っている以上に自分と話すのが難しいし、一挙手一投足に影響されるということ。

例えば「おはようございます」って言ったのに社長が何の反応も無かったら不安になりますよね。何かやらかしたかな‥って。社長からすると、実際はただぼーっとしていただけだったとしても(笑)。

私はそういう些細な怠慢から求心力というのは落ちていくと思っているので、地道ではありますが手書きのメッセージで思いを伝えることを続けてきました。

──社員全員へ手書きメッセージとなると、相当時間もかかることだったかと思います。それほど効果も感じられていたのですね。

私はそう思っています。

ここ10年間、私はシリコンバレーに住んでいましたが、手書きのメッセージを社長を退任して辞めるまでの8年間行い、毎月誕生日会のために日本に帰ってきていました。

全員に手書きのメッセージを書くというのをやっていたので、距離感・求心力としては保てたのかなと思います。

手法は色々あるとは思いますが、経営者として、会社にとって一番大切な人と向き合う努力を続けることは、時間を割いてでも優先すべきことなのかなと思います。

文=伊藤紀行 提供元=DIMENSION NOTE by DIMENSION, Inc. 編集=露原直人

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