経営・戦略

2023.02.02 12:30

AI翻訳などヒット連発 ポケトークCEOがユーザー目線でいられる理由 #2

露原直人

その2:勝負所を見極めてから、大胆に

──非常に大胆なマーケティングをされている印象です。何か心がけていることはありますか?

何も考えずに大胆にやっているわけではなく、数学的に見て得られる期待値が、マーケティングに使うお金よりも高いと確信できたときにのみ大胆に投資している感覚です。

例えば「特打」。3年間の利益をつぎ込んだとも言われるほどマーケティング費用を投下しましたが、実は「特打」の中にはパンフレットが入っていて、そこに掲載してある他サービスとの併売効果も含めれば、今の言葉でいうLTVがマーケティング費を圧倒的に上回る見込みがありました。

「ポケトーク」も同じです。

イメージタレントに明石家さんまさんを起用することはもちろん安くはありませんが、後々トータルでかかる電波代などを含めたマーケティング費用の総額に比べれば、その割合は小さなもの。それに対して、得られるメリットは非常に大きいものです。

一つ一つの費用項目を見て高いか安いかを考えるのではなく、事業をトータルで見てマーケティング効果を捉えることが大切ですし、意外とみなさんができていないポイントかもしれません。

──確信をどのようにして得ることができるのでしょうか?

これもいきなり得られるものではなく、少し打ってお客様の反応を見てから、「これはいける」と確信する流れです。

「特打」は1997年6月に発売していますが、あのCMを打ち始めたのは1999年。2年もかかっています。ポケトークも2017年の12月に発売し、明石家さんまさんを起用したのは次世代機が発売された2018年の9月から。

一般的に見るといきなり大投資しているように見えても、実はそういった前段階を経て判断しています。

具体的に見ているのは非常にシンプルで、売上推移と粗利金額。

例えば5000万円の粗利を月額で稼いでる商品があったとして、ここにマーケティングを1億円投下すれば、粗利が月額で1000万円増えるとします。そうであれば、10カ月で投資を回収できると簡単に計算できますよね。

この前段階が無い中でいきなりCMなどを打ってしまうと計算ができないですし、CMがあったケースと無いケースの比較もできません。

なので「とりあえず認知を広めたいからCM!」という戦略はおすすめしませんし、私たちの戦略とは全く異なるものです。
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文=伊藤紀行 提供元=DIMENSION NOTE by DIMENSION, Inc. 編集=露原直人

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