国内

2023.02.03

環境負荷の少ない放射線遮蔽材USC、福島廃炉への投入を目指したクラウドファンディング

プレスリリースより

放射線と共存できる社会を目指すレイバリアは、鉛を使わない、環境への安全性が高く、軽くて高性能なゴムの放射線遮蔽材「UCS」を商品化し、一刻も早く福島第1原発の廃炉現場に届けたいと考えています。しかし、これを量産に移すための「あと一歩」の資金が足りません。そこで同社は、投資型クラウドファンディングという秘策に出ました。

医学博士の船水博文氏は、福島第1原発の事故後に、いくつかの省庁から「なんとかなりませんか」と軽量な放射線遮蔽服の開発を依頼されました。通常の遮蔽服には鉛が使われているため、重くて動きづらいという問題があります。とくに廃炉作業では、大量の被曝を避けるために、なるべく短い時間で作業を終えなければなりませんが、重い遮蔽服では作業効率が悪く、作業員の身体的な負担は重大です。そこで船水氏は、大阪大学核物理研究センターと「ゴムのプロフェッショナル」であるシャチハタの協力のもと、UCS(ウルトラ・コズモス・シールド)を開発しました。

UCSは、同等性能の鉛の遮蔽材と比較して、重量が60パーセントと軽いため、遮蔽服に使えば作業員の負担が大幅に軽減されます。またパテ状に加工すれば塗ることもできるので、強烈な放射線で故障してしまいがちな廃炉ロボットのボディーに塗って防護することも可能です。

しかし、この画期的なUCSはなかなか現場に届きませんでした。船水氏ひとりの力では、これを商品化することができなかったからです。そこに、投資コンサルティングの専門家である行江本真聰氏が目を付け、UCSを商品化するためにレイバリアを創業。現在は、日本原子力研究開発機構などでの実証試験をクリアし、大手電力会社へのテスト納品の段階にまで達しています。

そして、量産化のための「あと一歩」の資金調達方法に、同社はRBF(レベニュー・ベースト・ファイナンス)による投資型クラウドファンディングを選択しました。RBFは、これまでの売り上げから将来の売り上げを予測して出資を募り、一定額を出資者に返済するというものです。この投資型クラウドファンディングは、日本で唯一、財務省から認可を受けた「宙とぶペンギン」で行っています。つまりこれは、リターンがお金という支援方法であり、誰もが投資家になれるというわけです。

このプロジェクトの受け付け期間は2023年3月31日まで。目標額は7000万円。1口あたりの出資金は25万円となっています。レイバリアは、想定償還率を1269パーセントとしています。今出資すると4年後に約12倍になるという計算です。ただし、スタートアップの成功率は「100社に1社」程度であり、一般金融商品でこのような倍率になるということは、「それだけリスクが高い」ことを示していると、宙とぶペンギンは忠告しています。リターンどころか出資金が戻ってこない可能性もあるので、くれぐれもご注意をとのことです。

しかし、UCSの開発の動機も性能も、大変に素晴らしいものです。なんとしても現場に届き、廃炉作業の役に立ってくれることを祈ります。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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