現在、惑星科学者たちは、火星は歴史初期であるわずか5億年の間、表面には液体の水が流れ、川や湖、三角州に大洋まであったと確信している。しかし現在の火星表面は地球で最も乾燥した砂漠地帯よりも住みづらい状態だ。
火星の表面は完全に荒涼としているとメリーランド州NASAゴダード宇宙飛行センターの惑星科学者、ジェニファー・スターンはいう。その表面に液体の水が存在しないという事実に加え、火星は連続的な宇宙線と太陽放射の影響を受けてきた。こうした悪条件に適応できる何らかの生命体を想像することは極めて困難だとスターンはいう。
これまで少なくとも表面について調べた結果は、すべてが非生命的、非生物学的プロセスに行き着く。未来の火星探査で最も有望なのは表面に近い地下だとスターンはいう。
未探査の表面付近は、表面よりも長い間、居住環境を維持してきた可能性があるとAASの紀要でスターンが指摘している。そして、有機分子の記録が、宇宙線のイオン化放射の届かないところに残っているかもしれない。
火星探査機バイキングの時代から居住性に関するパラダイムはどう変化したか
NASAが2機のバイキング探査機を送り込んだとき、すべては生命の問題に投げかけられたとスターンはいう。しかし、彼らが生命を見つけられなかったとき、それは次の25年間のNASA火星探査に対する終焉の兆候だった。
NASAの火星探査機バイキングの着陸機。1975年頃、火星表面を探査するために開発した同一の2機の1つ。バイキングは2つの主要部からなる。軌道から火星表面を撮影する軌道船と、表面から惑星を調べる着陸機だ(Photo by Space Frontiers/Archive Photos/Hulton Archive/Getty Images)
その後、生命が必要とする最も基本的なものは何かについて考え始めたとスターンはいう。そして、私たちの知る生命が存在するためには水が必要であることはほぼ疑う余地がないという。