政治

2023.01.30

ロシア軍、ウクライナの大砲の位置を音で特定するスマホアプリ開発を主張

Getty Images

ロシアの軍事専門誌『Arsenal of the Fatherland』によると、ブラッグが開発した第1次世界大戦中の装置と同じように、ロシア軍はウクライナ軍の大砲の位置を音響測距で特定する技術を開発したという。この方法では、前線から4~6キロメートル後方にある、専用アプリがインストールされた4台のスマートフォンを使用する。スマホのマイクからのデータは別のアプリが入った中央のタブレット端末に送られ、発射位置が計算される。

これまでにもスマホは実験的な音の測距に使われてきたが、それは比較的近距離からの銃声の位置を特定するためのもので、特に2013年にヴァンダービルト大学のチームが作成したシステムや、2017年にメリーランド大学が作成したもののように狙撃手の位置を特定するだけだった。スマホは複数の分散されたマイク、演算能力、正確なGPS位置情報という便利な組み合わせを提供し、この種のタスクに有用だ。だが実際には、これまで展開されてきた銃声位置検出システムは数メートル以内の発射者を検出するための専門的なマイクを備えた専用のハードウェアをベースにしていた。

ロシアの新システムは完全に信頼できるものではなく、開発者は「予期せぬ誤作動が発生する可能性がある」と述べている。これは大気の状態や地形による反響の影響かもしれない。そのため、あくまで一般的な指標と考えられる。このアプリが潜在的な発射位置を特定すると、ドローンを飛ばして偵察させ、確認した上で対砲兵砲撃が開始される。

ロシアのシステムが実際に稼働しているかどうかは不明で、同国の新しい軍事技術に関する主張には注意が必要だ。ロシアはベーパーウェア(概要が発表されただけで実現するかわからない製品)でかなりの実績がある。また、あるロシア軍のチームがスマホを使って大砲の位置を特定しようとしている一方で、指揮官らはスマホを前線から完全に追放しようとしていることも留意するに値する。なぜなら、皮肉なことにウクライナ軍はロシアの携帯電話の信号を検知し、それを使って大砲の攻撃を誘導しているからだ。つまり、この2つの策は単純に相殺されるだけかもしれない。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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