機能性をもつ食品は、ライバルにあたる商品と比べて“多少健康効果が高い”という程度のエビデンスでは、勝ち抜けません。もちろん圧倒的なエビデンスや画期的なソリューションがあれば別ですが、医薬品とは異なる領域でそれらを目指すことは、技術的な限界もあるように思います。
市場の覇者となるためには、生活者ニーズの見直しや深堀りによる独自性の高いコンセプト開発、ブランディングの切り口を変えていくなど、何らかの対策が必要です。
ヘルスからウエルネス、ウェルビーイングへと変化してゆく市場を前に、私たちはいかに自社の商品を優位性、差別性のあるものにしていくべきなのでしょうか? そのためには、まず、時代の変遷を捉える必要があります。
近年、「特定保健用食品(通称・トクホ)」と「機能性表示食品」が市場に数多く投入されてきました。しかし私は、特定の健康効果をうたうのは、すでに生活者のニーズに合わなくなってきていると感じています。
トクホは厚生労働省からの承認が必要な食品であり、取得のためには健康効果を客観的に評価できるエビデンスが必要です。エビデンスの獲得までに億単位の投資が必要な場合も珍しくはありません。
その後、規制緩和策として打ち出されたのが2015年に導入された機能性表示食品制度です。機能性表示食品は、トクホと同様、食品の健康効果を表示できますが、厚労省からの個別の承認は必要なく上市のハードルは大きく下がりました。
その結果、この制度を利用した商品が市場に溢れ、一時マーケットは活性化しましたが、大ヒットと呼べる商品は限られていて当初の活気は影を潜めています。それは、人々の健康意識がこれ以上ないほどに高まったコロナ禍であっても同様でした。
これには大きく2つの理由が考えられます。
ひとつは、健康機能を謳う商品の数が急激に増え、似たような機能を表示した商品が乱立した結果差別化が難しくなったこと。もうひとつは、商品が実際に実現できる健康効果と生活者の期待感にギャップが生まれたことです。
機能性表示制度によって可能になった直接的な健康機能の訴求が生活者の過大な期待感生み、実際の製品の体感できる健康機能とのギャップが不信感をもたらしてしまうケースが多く見受けられます。