最新研究から考える、食とウェルビーイングのいい関係

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これまで、食べ物のおいしさが実際にどのように人々を幸せな気分に、言い換えればウェルビーイングにするのかという研究はあまり進んでいませんでしたが、先日、この関係性についての興味深い研究成果が発表されました。

手軽かつバランスのとれた朝食として人気のフルーツグラノーラを日常的に食べることによる影響について、カルビーと桜美林大学の山口 創教授(身体心理学者で幸せホルモン:オキシトシン研究の第一人者)が調べたもので、オキシトシン分泌の朝食主食摂取による影響についての共同研究です。

その結果、朝食にフルーツグラノーラを摂取することで、オキシトシンの分泌が上昇されることが確認されました。

研究では18~37歳の健康な女性12名を対象に、午前8時~8時30分の朝食時に試験食を摂取してもらい、食事の前後で唾液を採取しオキシトシンの分泌量と、ストレス値の指標となるαアミラーゼ分泌量の測定を行いました。試験食は、ごはん、パン、オートミール、フルーツグラノーラの計4種類とし、さらに非摂取を設けています。

(c)カルビー/桜美林大学 山口 創教授

(c)カルビー/桜美林大学 山口 創教授


4つの試験食で、摂取前後のオキシトシン分泌の変化量を測定したところ、フルーツグラノーラが最もオキシトシン分泌量を高めることが確認されました。その泌量を他の行為で例えると、ペットをなでたり、触れ合ったりしたときの上昇率とほぼ同じだったとのことです。また、ストレス指標「αアミラーゼ」が最も低いのも、フルーツグラノーラであることを確認されました。

 (c)カルビー/桜美林大学 山口 創教授

(c)カルビー/桜美林大学 山口 創教授


フルーツグラノーラは、製造工程でグラノーラを焼き上げ、フルーツを添えています。山口教授は、このグラノーラとフルーツの「適度な甘さ」と焼き上げた香ばしい「香り」が、オキシトシン分泌に寄与したと分析しています。

オキシトシンと食に関する研究事例はまだ少ないのですが、山口教授の研究結果は、トクホや機能性表示食品でなく、かつ甘さや脂質も備えたフルーツグラノーラを食べることが、特にメンタル面でポジティブな影響を与えたと見ることができます。

ヘルス、ウエルネス、ウェルビーイングと食と健康の価値観が大きく変化していく中で、この事例を見れば、身体的健康だけがゴールにはならないことは明白です。目指すべきゴールは、身体的健康をひとつの要件にしながらの生活者のウェルビーイングを実現すること。さらにマーケティングにおいては、そのウェルビーイングを実現するストーリーが、市場の醸成に必要になっていくのです。

文=藤田康人

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