最新研究から考える、食とウェルビーイングのいい関係

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たとえば私たちが、ごぼうに含まれる水溶性の食物繊維に血糖値抑制効果があると知ってごぼうを使った一品を夕食に加えたとします。そして、このごぼうを食べてすぐに血糖値が下がらなかったとしても、クレームをつけるようなことはありません。なぜなら、ごぼう本来のおいしさという価値を生活者が理解しているからです。

しかし、これが、血糖値抑制効果をうたった健康食品だったらどうでしょうか? 血糖値抑制を訴求する商品に、明らかな体感効能がなければ、そこに「期待値ギャップ」が生まれ、クレームを入れないまでも、その商品を継続的には購買しないでしょう。

医薬品ではない食品で短期的に高い効果を期待させるのはそもそも無理があるのです。

現在の機能性表示食品の多くにはこういったオーバースペックと言えるものが多く、過剰に生活者の期待をあおっているように思います。実際に最近の機能性食品市場は停滞し、新たな成長のきっかけが掴めないまま数年が過ぎています。

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そんな中、今後は機能性食品ビジネスにおいても“商品の機能によって、生活者の身体的な健康だけではなく、どんなウェルビーイングが実現するのか?”という視点がポイントになっていくと私は考えています。

幸せのあるべき姿は、個人で異なります。加えてその個人の1日の中でも、さまざまなモーメント(瞬間)が存在し、状況や物事の感じ方によって心身の充足は常に揺れ動きます。

健康食品市場を眺めれば、糖質や脂質をカットした加工食品のラインナップは枚挙にいとまがありません。たしかに「疾病予防」という側面から見ると、こういった食品の有用性は高いでしょう。しかしこれらの味わいは……となれば、返事を聞くまでもなく、物足りないと回答する方が多いはずです。

おいしさと健康は、長らくトレードオフの関係にありました。食品加工技術の進歩で、糖分や脂肪分、塩分を大幅に減らした味のよい食品も実現しつつありますが、まだ万能とはいえません。特にチョコレートやプリンといった甘さや脂肪分のコクが味わいに直結するスイーツにおいては、限界がありそうです。

今後の食と健康を考える際には、「おいしさと健康」という2つの相反する要素をいかに両立させていくかがポイントとなります。
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文=藤田康人

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