アジア

2023.01.29

中国の百貨店「王府井」、コロナ後の需要を見込み海南省に初出店

Getty Images

中国の百貨店大手「王府井(ワンフーチン:WFJ)」が、免税アイランドとして知られる海南省に初出店した。海南省は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック中、海外旅行に行けない中国人が押し寄せて活況を呈した離島だ。

上海証券取引所に上場するワンフーチンは2023年1月18日、旧暦の正月を祝う春節の直前に、盛大なオープニングセレモニーを開いた。同店は、同省南東部の万寧市(まんねいし)に位置し、総建築面積は110万平方フィート(約10万2000平方メートル)超。自社所有で、今後は3段階を経て拡張される。

ワンフーチンの親会社である王府井集団は、同社は課税と免税の2本柱による事業を目指しており、新しくオープンした免税店「WFJ Duty Free」はその「出発点」だと述べている。

ワンフーチンが免税事業に乗り出すにあたって万寧市を選んだのは、異例だと思う向きもあるかもしれない。競合各社は、同省における観光の中心地である三亜市や、省都である海口市、あるいは、リゾート地ミッション・ヒルズを選択しているからだ。

実際、中国最大の免税流通企業CDFGは先ごろ、海口市に世界最大級の免税店モールを開業した。香港を拠点とするDFSグループと、スイスを拠点とするデュフリーも同じく海口市に出店しているほか、上海中服免税店(CNSC)とラガルデール・トラベル・リテールは三亜市に店舗を構えている。

ワンフーチンは、万寧市の「海岸沿いの独特の文化と観光名物」、ならびに中国小売業界の象徴的ブランドである同社の知名度を活かして、消費者を呼び込みたい考えだ。また、春節にあたっては、これまで抑え込まれてきた需要(ペントアップデマンド)を頼りに、客の流れを期待している。中国政府は、春節直前の1月8日に、ゼロコロナ政策を完全に撤廃した。

中国政府の公式データ(1月18日現在)では、春節に向けた帰省ラッシュが1月7日に始まって以降、総移動回数は4億8000万に上る。2020年より増えたが、コロナ禍前の2019年と比べると47%減少している。

海南省の場合、観光需要の先行きはさらに明るい。航空券の予約数を分析する調査会社フォワードキーズ(ForwardKeys)によれば、三亜市と、海南島の玄関口である海口市は、中国で航空券予約数が最も早く回復した行き先トップ3に入っている(もう1カ所は、四川省成都市)。三亜市は、2019年と比べて102%に、海口市は88%に達した。

万寧市観光の目玉は「花」

ワンフーチンによると、WFJ Duty Freeの店舗デザインを手がけたのは「有名なイタリア人チーム」で、国際的港湾都市としての万寧市の文化と観光の特色がうまく融合されている。建物自体はそれほど目を引くわけではないが、その規模だけでも、万寧市の新たなランドマークと言っていいだろう。

万寧市の有名観光スポット「海南熱帯雨林国家公園」を踏まえ、幻想的な花々や植物を店舗のメインテーマに据えて、有名なアーティストとコラボレーションしている。

海南省政府は2023年1月13日、2023年のGDP成長率目標をおよそ10%と発表した。これは、最大6%と予想される国内平均を上回る数字だ。当局は、観光客数を前年比で20%、観光収入を25%増加させることで、目標達成を目指している。

forbes.com 原文

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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