今回は、ト・カロンの畑と、この地から生み出される魔法のように魅力的で、それぞれ独自の輝きを放つ、3つのワインブランドを紹介したい。
「最高に美しいもの」を意味する畑
ト・カロンは、ナパの中心地オークヴィルにあり、その歴史は1868年にまで遡る。この年、ナパの黎明期に名を馳せた人物の一人、H.W.クラブがこの地に最初のブドウを植樹した。クラブはここを、古いギリシャ語で「最高に美しいもの」を意味するト・カロンと呼んだ。それからナパは、禁酒法など困難な時期を経て、1960年代ごろから現在のナパの礎を創った人物が次々と現れ、世界有数のワイン産地として名が知られていく。そういった現代のナパを形造った功績者の一人が、ナパ・ヴァレーの父と呼ばれるロバート・モンダヴィだ。
家族でワイナリーを営んでいたモンダヴィは、このト・カロンから造られるワインが一貫して高品質のワインを生み出すことから、そのポテンシャルの高さに目を付ける。1958年にこの土地を購入すると、1966年、ナパから世界に通じるワインを作るべく、自分のワイナリーを設立するとき、この土地のそばにワイナリーを建てた。現在でも、ロバート・モンダヴィ・ワイナリー(RMW)はト・カロンの大部分を所有し、ここからワインを造り続けている。
実際に畑を歩いてみると……
ナパ・ヴァレーは地中海性気候で、ブドウの生育期間である春夏にかけて雨がほとんど降らず、健康な果実が育ちやすく、ブドウ栽培に恵まれた土地だ。ト・カロンは、ナパ・ヴァレーの西側にあるマヤカマス山脈の麓からヴァレーフロアー(谷床平地)に広がる広大な畑だが、そこから造られるワインの品質の高さからナパの「特級畑」と評される。長年、この畑をみてきたマスター・オブ・ワインのマーク・デ・ヴィア氏は、その理由を次のように説明する。