アジア

2023.01.26

インドの実業家ゴータム・アダニ、世界長者番付4位に後退

ゴータム・アダニ(Photo by Vishal Bhatnagar/NurPhoto via Getty Images)

アジア一の富豪であるインドの実業家ゴータム・アダニ(60)が25日(米国時間)、フォーブスのリアルタイム世界長者番付で3位の座をアマゾン創業者ジェフ・ベゾスに明け渡した。アダニが率いるインドのコングロマリット(複合企業)、アダニ・グループについて、長年にわたって株価操作や不正会計に手を染めているというリポートを著名なショートセラー(空売り筋)が公表し、傘下企業の株価が下落した。グループ側は疑惑を強く否定している。

不正を告発したのは空売りで知られる米投資会社のヒンデンブルグ・リサーチ。24日のリポートで、アダニ・グループについて「数十年にわたって、臆面もなく株価操作や不正会計のスキームに関与してきた」と主張し、グループに対してショート(空売り)ポジションをとっていることを明らかにした。アダニはエネルギーや不動産、インド最大の港湾など幅広く事業を手がけている。

ヒンデンブルグの調査によると、アダニ一族はグループの上場企業の財務を健全に見せかけたり、資金を洗浄したり、あるいは各社の株価を操作したりするために、管理する「広大な迷宮」のようなオフショアのペーパーカンパニー群を通じて、巨額の資金をこれらの企業に移していた。必要な開示を行っていないケースも多々あったという。

ヒンデンブルグの発表を受けて、25日のインド株式市場でアダニ・グループ各社の株価は急落した。フォーブスの推計によると、これにともなってアダニの純資産額は65億ドル(約8400億円)減の約1191億ドル(約15兆4100億円)に縮小。世界長者番付では1199億ドル(約15兆5100億円)のベゾスに抜かれて4位に後退した。アダニは一時、この番付で2位に浮上したこともあり、上位3位から外れるのは昨年9月以来。アジア人ではなおトップを保っている。

ヒンデンブルグのリポートの内容について、アダニ・グループのジュゲシンダー・シン最高財務責任者(CFO)は声明で「偏向のある不正確な情報と、陳腐で事実無根の疑わしい主張の悪意ある組み合わせだ。こうした主張はインドの最上級の裁判所で問われ、否定されている」と切り捨てている。

ヒンデンブルグはこれまで、規制当局の調査の火付け役となってきた。2020年のリポートでは、米電気自動車(EV)メーカーのニコラを「詐欺」と断じ、当時のトレバー・ミルトン会長が事業をめぐって投資家を欺いたと指弾した。ミルトンはこのリポートの公表後、資産額が10億ドル(約1300億円)以上のビリオネアから脱落し、のちに証券詐欺罪で起訴されて有罪判決を受けている。

世界長者番付の1位は引き続きフランスの高級ブランドLVMHモエヘネシー・ルイヴィトンのベルナール・アルノー会長兼最高経営責任者(CEO)で、純資産額は推定2120億ドル(約27兆4300億円)。テスラのイーロン・マスクCEOが1600億ドル(約20兆7000億円)でこれに続いている。

forbes.com 原文

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