禁止令は一時的なものだが、水曜日はミーティングなしの日にすることなども取り決めているという。社員たちを無駄な会議に付き合わせるのではなく、通常の業務を続けてもらうのがその目的だ。同社の社員は1万人を超える。
1万人超の社員に最適なミーティング方針がわかっていると言う経営者がいるとすれば、それこそ傲慢だ。社員のなかには厳しい納期に追われている人もいるだろうし、プロジェクトの初期段階でブレーンストーミングをしている人もいるだろう。
あるチームはよく知られたソリューションを実行に移しているかもしれないし、別のチームはまったく新しいテクノロジーに取り組んでいるかもしれない。1つの方針があらゆる状況で通用するなどというのはまずあり得ないのだ。
優秀なマネジャーとは、部下たちのことをよく知っている人のことだ。アリスはすぐれたアイデアを大まかなかたちですぐに示せる半面、細かい部分をきちんと把握するのに時間がかかる。ブラッドリーは独創的なアイデアはめったに思いつかないが、プロジェクトに必要な細かい手順をひとつひとつ説明できる。
こうした人からなるチームと、別の個性をもった人たちのチームとでは、取り組んでいる問題がまったく同じであっても、理想的な会議のあり方は違ったものになるだろう。
経済学者のフリードリヒ・ハイエクは「社会における知識の利用」という非常に読みやすい論文で、このテーマについて論じている。彼は「時と場所の特定の状況についての知識」の重要性を強調する。