貧困は、ある日突然やってくる。
「誰だってホームレスになりうる。決して他人ごとじゃない」と語るのは、ロック界のスーパースター、ジョン・ボン・ジョヴィ(60)だ。世界的バンドBON JOVIのリーダーとして長年活躍する一方、慈善活動に情熱を注ぎ、米Forbesの「最も慈悲深いセレブ」ランキングで1位に選ばれたこともある。
2011年、ジョンと妻のドロシアは、ユニークなレストラン「JBJ(ジョン・ボン・ジョヴィ)ソウルキッチン」を米フィラデルフィアに開業した。「Pay it Forward」(善意をつなぐ恩送りの意味)を掲げるこの店では、お金がある人もない人も、平等に席について食事をすることができる。
昨年9月、米国で開催された「Forbes400慈善サミット」に、ジョンは妻ドロシアとともに登壇。慈善事業家やビリオネアたちを前に、ロックスター夫婦が訴えたこととは。
![昨年、米Forbesデジタル版 の表紙を飾ったボン・ジョヴィ夫 妻。](https://images.forbesjapan.com/media/article/60423/images/editor/1d298a520a640c98323a5dc36e7b638994cf6034.jpg?h=787)
そんなことをしていたら、チームの地元フィラデルフィアで「ホームレス問題のマイケル・ジョーダン」ともいうべき人物を紹介されました。それがシスター・メアリー・スカリオン(ホームレスの救済活動で知られる修道女。2009年に米『TIME』誌の「世界で最も影響力のある100人」に選出)です。彼女と出会って、僕はホームレス問題に目覚めた。これが長い道のりの始まりです。
あらためて言いますが、ホームレスになるという状況は、いつ、誰に起きてもおかしくない。人生なんて、景気が悪化すれば一変してしまうものなんです。そう気づいたことが、次のステップにつながりました。「JBJソウル・キッチン」のもととなるアイデアが浮かんだのは、ドロシアと2人でテレビを観ていたときでした。
ドロシア(以下、D):誰でもおいしい食事を楽しめるレストランスタイルの店を開く、という考えに取りつかれてしまって。私たちがやりたかったのは、食材や運営費用を寄付で賄う店ではありません。お金に困っている人は、食事代を払わなくてもいい。その代わり、ボランティアとして店の仕事を手伝ってもらいます。一方で、食事代が払える人には、自分が食事をしたついでに、恩送りのかたちで他の誰かのお代をもってもらうのです。
![店のマニフェスト](https://images.forbesjapan.com/media/article/60423/images/editor/7e0c045609d08494e61c94994bad51856dc02abb.jpg?w=600)
「ソウルキッチン」も、コロナ禍で通常営業ができない時期がありました。店の洗い場に外部の人間を入れられなくなってしまったからです。それまで皿洗いはボランティアにやってもらっていたので、やる人がいなくて。結局、洗い場は僕が引き受けました。
![料理人もボランティア](https://images.forbesjapan.com/media/article/60423/images/editor/ae536a5486beb90c1ad4db0b8306c57aad169aeb.jpg?h=794)