グッチやウォルマート、メタバースを利益につなげる企業戦略

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数千人の買い物客が、新たに開店する店舗に詰めかけ、衣類を試着したり、大量に購入しているところを想像してみよう。しかも、そこに実際の店舗は存在しない。

小売業界は、没入的仮想現実、すなわちメタバースの力を借りて、こうした光景を実現しようと歩みを進めている。

「買い物するアバター」を狙う小売業界

仮想現実と拡張現実(コンピューターで生成した画像を実世界に重ねる技術)は、消費の推進に大いに貢献する可能性がある。こうした体験を支える人工知能(AI)は、ユーザーの行動に関するデータを絶え間なく収集し続けているからだ。

バーチャルインフルエンサーや、AIストアアシスタントの誕生は近い。こうしたアバターは、ユーザー好みのスタイルを学習し、ファッションに関するアドバイスや、商品のレコメンドをするようになるだろう。ソフトウェアメーカーのアコウェブ(Accoweb) は、リポートのなかでそう予測している。

「AI技術のポテンシャルを考えれば、バーチャルクローゼットは遠からず誕生するだろう。ユーザーが手持ちの衣類をそこにしまい、新商品を受け取り、個人に合わせたコーディネートのアドバイスをもらえるような場所のことだ」と、同リポートは述べている。

例えば「レック・ルーム」というゲームでは、プレーヤーは、アバターに着せる衣服や、アバターの仮想居住空間を飾る家庭用品を買うことができる。こうした商品の一部は、実在のブランドが販売している。

画面上の商品を、実際に手に取れるようにもなりつつある。小売店やブランドが、新商品を発売前に披露するステージとしてメタバースを利用しているためだ。一方、コミュニティをまるごと創造し、より詳細なデータポイントの捕捉を狙うブランドもある。以下に例をあげよう。

・コカ・コーラはメタバース上で、「ゼロシュガー・バイト」味のコーラを開発し、そのあと、限定エディションの実際の商品として発売。現実でもバーチャルでも消費できるようにした。

・ラルフ・ローレンは2022年11月、ゲームプラットフォーム「フォートナイト」上で、デジタル・アパレルやデジタル・アクセサリーのラインを発足。その後ウェブサイト上で、実物の「カプセル」コレクションをリリースした。

・ウォルマートは2021年、バーチャル試着室の「ジーキット」を買収。2022年に同社のテクノロジーを、ウォルマートのアプリと公式サイトに「ビー・ユア・オウン・モデル」の名で導入した。これによりユーザーは、自分の画像をアップロードして、アパレル商品が自分に似合うかどうかを確かめることができる。

・グッチは、ゲームアプリ「ロブロックス」上に、専用のバーチャル空間「グッチタウン」をつくりあげた。グッチタウンは、ソーシャルな空間であるだけでなく、ゲームプレーヤーがグッチのデジタル商品(ロブロックスのアバターに着せることのできる衣類など)を購入できるグッチストアを備えている、とリテールダイブ(Retail Dive) は報じている。
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